肥前鹿島駅「2駅舎」「2ロータリー」に 新幹線開業で特急大幅減、開業時の姿を復元



佐賀県鹿島市は7月13日、長崎本線・肥前鹿島駅と同駅周辺の再整備に向けた基本計画を発表した。新しい駅舎と開業当時の姿を復元した駅舎を整備し、駅前には二つのロータリーやイベント開催に対応したスペースを設ける。

現在の肥前鹿島駅。【撮影:草町義和】

肥前鹿島駅は島式ホーム1面2線で駅舎はホーム北端の西側にある。基本計画によると、現駅舎の南側に2階建ての新駅舎を整備。広域交流拠点施設と位置付け、観光客向けの情報発信機能や売店、待合室、キッズスペース、トイレ・授乳室などを設ける。2階には「子どもが好む列車を見学できる」展望スペースを設けるという。

現在の駅舎はいまから90年以上前、1930年の完成当時の姿に復元する。駅舎内には高校生が自習できるよう机や電源、Wi-Fiを確保した「静かな待合室」を整備。出張ビジネスマンのワーキングスペースとしても活用する。

開業当時の肥前鹿島駅舎の想像図。【画像:鹿島市】

駅前は北側に公共交通ロータリー、南側に一般車ロータリーを設け、両ロータリーを分離する形で中央に「えきまち広場」を整備する。公共交通と一般車のロータリーを分離することで道路混雑の緩和や歩行者の安全確保を図るという。

「えきまち広場」は現在の鹿島バスセンターなどを撤去して整備し、イベントの開催に対応した屋根付きの多目的施設や駐輪場を設ける。

肥前鹿島駅と同駅周辺の施設配置図。【画像:鹿島市】
駅前にある鹿島バスセンター。【撮影:草町義和】

全体構想では東口の整備も盛り込まれていたが、今回の基本計画では「線路東側は都市計画用途地域外のため、短期的な整備を見送りたい」「市全体のまちづくりの方向性の見直し等が生じた際に、線路東側の都市計画上の位置づけを検討」として盛り込まれなかった。

肥前鹿島駅はJR九州が運営する長崎本線の駅。国鉄時代の1930年に開業した。このとき建設された駅舎が現在も使われているが、1955年頃には駅員の休憩室整備のため増築され2階建てに。ほかにも屋根材の変更や売店エリアの増築などにより開業時の姿から大きく変わっている。基本計画では現駅舎を「歴史と記憶を継承する肥前鹿島駅の原点」と位置付け、開業当時の姿に復元することを盛り込んだ。

現在は長崎本線の普通列車のほか特急「かもめ」が上下計47本停車している。今年2022年9月23日に西九州新幹線・武雄温泉~長崎が開業すると、「かもめ」は新幹線に移る形で廃止。代わりに博多~肥前鹿島などを結ぶ特急「かささぎ」が新設されるが、肥前鹿島駅への停車本数は上下計14本と大幅に減る。

鹿島市は西九州新幹線の開業で肥前鹿島駅の乗降客数や利用形態が様変わりするとし、「交通結節点をまちの交流循環拠点へ機能強化」「豊かな暮らしや風景を感じられるまちの玄関口」「歴史と文化を活かし、賑わいを創出」の3点を整備目標に掲げた全体構想を昨年2021年11月に策定。これをベースに基本計画を取りまとめた。

基本計画に盛り込まれた今後のスケジュール案によると、新駅舎や現駅舎、ロータリーの工事は佐賀県の事業として2024年度以降に着手。その後、鹿島市の事業として駐車場や広場などの工事に着手する計画だ。

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