黒部川(富山県)の峡谷地帯に設けられた関西電力の物資輸送ルート(黒部ルート)について、富山県は3年後の「一般開放・旅行商品化」に向けた名称を9月2日から募集している。
募集期間は10月31日まで。富山県が開設した黒部ルートの特設ウェブサイトなどで募集している。自由記入のほか、「宇奈月黒部キャニオンルート」「黒部宇奈月ヒストリアルルート」の二つから選ぶこともできる。
黒部ルートは黒部峡谷鉄道の終点・欅平駅から黒部川の峡谷地帯を南下し、黒部ダムに至る全長約18kmの物資輸送ルート。全線ほぼトンネルで、トロッコが走る下部軌道と上部軌道、貨物用ケーブルカーのインクライン、道路で構成される。下部軌道と上部軌道はトロッコを搭載できるエレベーターで接続。上部軌道の途中には小説『高熱隧道』で描かれたトンネルがあり、掘削時には岩盤温度が160度超に。いまも40度程度の超高温で推移している。
業務用のため一般の旅行者が全線を通ることはできないが、1996年から公募による見学会が行われている。実施規模は年間で約2000人。1回(片方向)につき約30人で実施日も年間約30日(平日のみ)と限られている。近年の応募倍率は3~4倍で推移していたが、2020年と2021年はコロナ禍の影響を受け実施されていない。
黒部ルートは黒部ダムで山岳観光ルートの立山黒部アルペンルートに接続。黒部ルートを利用できれば新たな周回ルートができあがり、観光客の増加が見込まれる。このため富山県は黒部ルートの本格的な一般開放を関西電力に求めたが、同社は従来、施設規模や安全性確保などの問題から難色を示していた。
2018年、両者は一般開放・旅行商品化協定を締結。関西電力が安全対策工事を実施し、この工事の完了後、公募方式の見学会を終了して旅行商品による一般開放に移行することになった。年間では公募見学会の5倍となる最大1万人を受け入れる。2024年から一般開放される予定。
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