西武多摩川線「サイクルトレイン」7月1日スタート 分解不要、自転車そのまま車内へ



西武多摩川線で実証実験が行われる「サイクルトレイン」。【撮影:草町義和】

西武鉄道は7月1日から、自転車をそのまま列車内に持ち込むことができる「サイクルトレイン」の実証実験を多摩川線(東京都)で始める。これに先立つ6月29日、サイクルトレインのデモンストレーションが西武多摩川線の武蔵境駅で行われ、報道関係者に公開された。

武蔵境駅は西武多摩川線の起点で、JR中央線と連絡している。連続立体交差事業(連立事業)により西武の駅は2006年に高架化され、地上の改札口と高架ホームは階段やエレベーターで結ばれている。デモンストレーションは、自転車を手押しして改札を通り抜けるところからスタート。利用者役の西武鉄道社員は複数ある自動改札の通路のうち、幅の広い通路の前でいったん停止し、ICカードを自動改札の読みとり部にタッチしてから改札内に入った。

自転車を押しながら通路幅が広い自動改札を通り抜ける。【撮影:草町義和】

利用者役は自転車を押しながらエレベーター乗り場へ。床にはサイクルトレインの利用者向けに、改札からエレベーターまでの経路を示した案内図が貼られている。西武鉄道が公表しているサイクルトレインの案内によると、持ち込める自転車の大きさは長さ180cm・幅45cm(ハンドル幅は含まず)以内。これは武蔵境駅のエレベーターの寸法にあわせたものという。原動機付き自転車(原付バイク)やスタンドの付いていない自転車は大きさにかかわらず持ち込めない。

改札口からエレベーターへ移動。床などにサイクルトレイン利用者向けの移動経路の案内が貼られている。【撮影:草町義和】
エレベーターを使って高架ホームに移動。【撮影:草町義和】

エレベーターに乗って高架ホームに着いた利用者役は、自転車を押しながらホームに停車している列車の武蔵境寄り先頭車(1号車)に乗り込む。ホームと車両の床に若干の段差があるものの、とくに問題なく車内へと入っていった。

西武多摩川線の列車は4両編成の電車が使われているが、自転車を持ち込めるのは1号車のみ。1号車の窓には「サイクルトレイン」と記されたステッカーが貼られており、ホームの床にも1号車が停止する部分に同様のステッカーが貼られていた。

自転車を持ち込める1号車の窓にもステッカーが貼られている。【撮影:草町義和】
ホームの床にも「自転車乗車位置」のステッカーが。【撮影:草町義和】
自転車を押しながら車内へ。【撮影:草町義和】

利用者役は窓際の席に座り、手すりに備え付けられたベルトを自転車に巻き付け、手で自転車を支えた。乗車中はこの体勢で自転車を支える必要がある。

自転車を持ち込める1号車の車内。【撮影:草町義和】
手すりには自転車を固定するためのベルトが備え付けられている。【撮影:草町義和】

実証実験は7月1日~9月30日の3カ月間。平日の10時~16時と土曜・休日の8時~18時に限り、自転車を持ち込むことができる。持ち込み料は無料。自転車とともに乗り降りできる駅は、武蔵境・新小金井・白糸台・競艇場前・是政の5駅。昨年2020年12月に駅舎が橋上化された、新小金井~白糸台間の多磨駅では利用できない。

西武鉄道によると、回送列車を使って自転車の車内持ち込み試験を繰り返し、実証実験にこぎ着けた。多磨駅は地元自治体の府中市が橋上駅舎に接続している自由通路を管理しており、同市との調整が必要なことから、今回の実証実験では除外したという。

自転車を押しながら車内へ。【撮影:草町義和】
手すりに設置された固定ベルトで自転車を固定する。【撮影:草町義和】
乗車中はベルトで固定するほか、手で自転車を支える必要がある。【撮影:草町義和】

多くの鉄道では自転車を分解して袋に入れれば持ち込み可能だが、近年はローカル線や地方都市の鉄道路線を中心に、自転車を分解したり折り畳んだりせず、そのまま持ち込むことができる「サイクルトレイン」のサービスを導入した路線が増えている。東京のような大都市圏での導入は珍しく、定期運行の列車を使ったサイクルトレインの実施は、関東大手私鉄では初めてとみられる。

西武鉄道は実証実験終了後の10月以降も、引き続きサイクルトレインを実施するかどうか検討するとしている。西武多摩川線以外の路線での実施は、いまのところ検討していないという。

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