羽田空港アクセス線の設計最高速度「110km/h」許可時点の事業基本計画が判明



JR東日本が計画している羽田空港アクセス線(仮称)の整備区間のうち、東京貨物ターミナル~羽田空港新駅(仮称)間の「アクセス新線」区間について、鉄道事業法に基づく事業基本計画などの内容が判明した。

東京貨物ターミナル駅と東京臨海高速鉄道りんかい線の車両基地のあいだを通り抜ける大汐線(左端の線路)。将来は羽田空港アクセス線として改修される。【撮影:草町義和】

羽田空港アクセス線は、東京駅・新宿・新木場の各方面から東京貨物ターミナルを経由し、羽田空港に至る鉄道計画。JR東日本は田町駅付近(東京駅方面)~東京貨物ターミナル間の「東山手ルート」と東京貨物ターミナル~羽田空港新駅間の「アクセス新線」を先行整備する方針で、東山手ルートは既設の東海道本線貨物支線(大汐線、休止中)を改修して使用。アクセス新線は新たに建設する。建設費は3000億円。2029年度の開業を予定している。

JR東日本は昨年2020年8月21日、アクセス新線の第1種鉄道事業許可を申請。今年2021年1月20日に国土交通大臣が申請通り許可している。鉄道プレスネット編集部は3月11日までに鉄道事業許可申請書の一部を入手し、事業基本計画などが判明した。

事業基本計画によると、路線名は環境影響評価調査計画書(2019年5月)などで示されている「羽田空港アクセス線(仮称)」ではなく「東海道線」とされており、独立した路線ではなく東海道本線の支線扱いになっている。開業までに正式な路線名を定めて変更するか、あるいは案内上の路線名を別に設定することが考えられる。

距離は5.0kmで線路は複線。動力や軌間はJRの標準的な在来線と同じ「電気直流1500V」「1067mm」だ。設計最高速度は110km/h、設計通過トン数は4000万トン/年とされている。1日の計画供給輸送力は7万1000~27万4000人。駅は羽田空港新駅だけで、それ以外の駅は設定されていない。

「アクセス新線」の鉄道事業許可申請書に添付されていた事業基本計画の一部。路線名は「東海道線」としている。

線路予測平面図(2万5000分の1)では、東京貨物ターミナル寄りの「事業始点」が9.575kmの地点(JR東日本 東京電車線技術センター付近)、羽田空港寄りの「事業終点」が14.533kmの地点(羽田空港第1・第2ターミナルビル地区の第3駐車場の南側)とされており、事業区間は差し引き4.958kmになる。羽田空港新駅は駅の中心点とみられる場所が14.37kmの地点で、事業終点より約160m手前だ。

0kmの地点がどこかは線路予測平面図には記載されてないが、大汐線の現在の起点である浜松町駅から事業始点までの距離が約8.4kmのため、浜松町駅から北へ1kmほど進んだ場所(1986年に廃止された汐留貨物駅付近)を0km地点とみなしていると思われる。

鉄道事業許可申請書に添付されていた線路予測平面図の一部。埋立地や運河を通り抜けるルートが描かれている。

線路予測縦断図(縦800分の1、横5000分の1)によると、事業始点付近を除き海面より低い位置に線路を設ける計画で、ほぼ全線が埋立地や運河の下のトンネルになるとみられる。最急勾配は34.5パーミル(事業始点から約1~2kmの区間)だ。

鉄道事業許可申請書に添付されていた線路予測縦断図。ほぼ全線が地下トンネルだ。

鉄道事業許可の次は、詳細な工事計画を定めた工事施行認可の手続きになる。工事施行認可の申請期限は2022年1月19日。鉄道事業許可の段階では大まかな計画で手続きされることが多いため、工事施行認可の手続きの過程で線路の位置や距離などが大きく変わる可能性もある。

既設線を改修する東山手ルートの田町駅付近~東京貨物ターミナル間は、1987年の国鉄分割民営化時にJR東日本が第1種鉄道事業許可を受けている。鉄道事業許可の手続きは不要だが、事業基本計画変更や鉄道施設変更の手続きが必要だ。