羽沢横浜国大~鶴見「170円」に注意 利用ルートは限られている

相鉄・JR直通線の開業と、それに伴う相鉄線とJR線(新宿方面)の相互直通運転が始まってからまもなく1カ月。開業の前後には、相鉄線とJR線の境界となる羽沢横浜国大駅(横浜市神奈川区)に設置されたJR線の運賃案内図が、SNSなどで話題を呼んだ。

羽沢横浜国大駅に設置されている運賃案内図。よく見ると「隣」の武蔵小杉駅より鶴見駅のほうが安い。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

この案内図では、羽沢横浜国大駅と武蔵小杉駅が直接結ばれているかのように描かれていて、途中に駅はない。ところが、羽沢横浜国大駅からの運賃額は、次の武蔵小杉駅(川崎市中原区)が310円と表示されているのに対し、羽沢横浜国大~武蔵小杉間のルートから外れていて武蔵小杉駅よりも遠い場所にあるように描かれている鶴見駅(横浜市鶴見区)は170円。140円も安い。

ただし、羽沢横浜国大~鶴見間を170円で確実に利用できるルートは「羽沢横浜国大~(直通列車)~武蔵小杉~(横須賀線や湘南新宿ライン)~横浜~(京浜東北線)~鶴見」に限られる。ほかのルートでは基本的には170円で利用できるかどうか微妙、もしくは不可能だ。

■ 「170円ルート」は特例で対応

羽沢横浜国大駅からの運賃が武蔵小杉駅より鶴見駅のほうが安くなる理由は、すでにいくつかのメディアで報じられている。改めて解説すると、直通列車は実際には、羽沢横浜国大駅から鶴見駅や新川崎駅を経由して武蔵小杉駅に向かうため。羽沢横浜国大駅からの距離は鶴見駅のほうが武蔵小杉駅より短く、距離を基準に算定される運賃額も鶴見駅のほうが安くなる。

JR線(黒)と相鉄線(青)。直通列車(太線)は実際には羽沢横浜国大駅から鶴見駅と新川崎駅を経由して武蔵小杉駅に向かう。【作成:鉄道プレスネット編集部】

ただ、羽沢横浜国大方面と武蔵小杉方面を結ぶ直通列車はすべて、途中にある鶴見駅と新川崎駅を通過する。そのため、運賃案内図では羽沢横浜国大~武蔵小杉間を直接結ぶ線で描いており、鶴見駅より武蔵小杉駅のほうが近いように見えるわけだ。同様に鶴見駅を通過する横須賀線や湘南新宿ラインも、運賃案内図では新川崎~横浜間を直接結んでいるように描かれている。

このため、羽沢横浜国大駅から鶴見駅に向かう場合、たとえば羽沢横浜国大~(直通列車)~武蔵小杉~(横須賀線や湘南新宿ライン)~横浜~(京浜東北線)~鶴見というように、少なくとも列車を2回乗り継がないと鶴見駅にはたどり着けず、本来のルートから外れた鶴見~武蔵小杉間と鶴見~横浜間を往復しなければならない。

ということは、羽沢横浜国大~鶴見間は170円の片道乗車券を買うだけでは移動できないはず。さすがにこれは不合理なので、JRも羽沢横浜国大~鶴見間を170円で移動できるよう、新たに特例を設けた。

JRが設けた特例は「区間外乗車」というもの。JR東日本のウェブサイトによると、切符の経路が次の場合、経路から外れた鶴見~横浜間や新子安~横浜間、東神奈川~横浜間、鶴見~武蔵小杉間も利用できる。

「鶴見、新子安、東神奈川または川崎以遠(蒲田または尻手方面)、国道以遠(鶴見小野方面)もしくは大口以遠(菊名方面)の各駅と羽沢横浜国大駅との各駅相互間」

羽沢横浜国大~鶴見間を移動する場合は太線の区間も利用できる。【画像:JR東日本】

羽沢横浜国大~(直通列車)~武蔵小杉~(横須賀線や湘南新宿ライン)~横浜~(京浜東北線)~鶴見のルートで移動するなら、上記の特例によって鶴見~武蔵小杉間と鶴見~横浜間も利用できるため、羽沢横浜国大~鶴見間の最短経路の片道乗車券、つまり170円で移動できることになる。

■ 「大都市近郊区間」の特例も使える?

一方、ニュースサイト『鉄道コム』は11月30日付けの記事「『遠い駅』の方が安い? 相鉄・JR直通線の運賃のナゾ」で、「羽沢横浜国大駅は、実際の乗車経路に関わらず最短経路で運賃を計算する『東京近郊区間』エリアに含まれます。そのため、近郊区間の乗車ルールに則る限りは、羽沢横浜国大~鶴見間でどのような経路に乗車しても、運賃は170円です」(2019年12月22日23時50分時点の記述)とし、区間外乗車の特例には一切触れていない。

しかしこれは、やや不正確だ。

東京近郊区間は「大都市近郊区間」というJRの特例の一つ。関東を中心としたJR線の多くが東京近郊区間に指定されており、東京近郊区間のエリア内を利用する場合は大都市近郊区間の特例が適用され、どんなルートでも最短経路の運賃で乗車することができる。

たとえば、東京駅から山手線で上野、田端、池袋、新宿、渋谷、各駅を経由して品川駅に向かう場合(27.7km)、大都市近郊区間の特例が適用されるため、新橋駅を経由する最短経路(6.8km)で運賃を計算。その金額は170円になる。

ただし、「どんなルートでも」といっても、正確には片道乗車券の経路として成り立っている場合に限られる。JR線における片道乗車券は、「一度通った駅まで」しか発売されない。

■ 「区間外乗車」以外のルートは要注意

羽沢横浜国大駅から南武線や川崎駅、京浜東北線を経由して鶴見駅に向かう「6の字ルート」の場合、実際の経路は羽沢横浜国大→(直通列車)→鶴見(※通過)→(直通列車)→武蔵小杉→(南武線)→川崎→(京浜東北線)→鶴見になる。「一度通った駅(鶴見)まで」だから片道乗車券の経路として成立し、大都市近郊区間の特例により170円で移動できるはずだ。

ただ、大都市近郊区間での「6の字ルート」は規則の解釈上、どの方向であっても大都市近郊区間の特例は適用されないとする見解もある。当のJRもOKとする見解を出したかと思えば、逆にNGという見解を出すこともあるようで、実ははっきりしない。

羽沢横浜国大から鶴見に向かう場合の「6の字」ルート。片道経路として成立するルートだが、大都市近郊区間内の「6の字」ルートは認められないとする見解もある。【作成:鉄道プレスネット編集部】

これに対して「逆方向の6の字」、鶴見駅から京浜東北線や川崎駅、南武線、武蔵小杉駅を経由して羽沢横浜国大駅に向かう場合、そのルートは鶴見→(京浜東北線)→川崎→(南武線)→武蔵小杉→(直通列車)→鶴見(※通過)→(直通列車)→羽沢横浜国大になる。

「一度通った駅」の鶴見「まで」ではなく、さらにその先の羽沢横浜国大駅に向かうため、そもそも片道乗車券の経路としては成立しない。そのため規則上は片道乗車券2枚か、もしくは連続乗車券が必要。170円だけでは移動できない。

鶴見駅から上記のルートで羽沢横浜国大駅に向かう場合は一度通った鶴見駅を二度通る形になるため片道経路として成立せず、170円だけでは移動できない。【作成:鉄道プレスネット編集部】

いずれにせよ、羽沢横浜国大~鶴見間をどの方向でも170円で確実に移動できるルートは、区間外乗車の特例が適用される「羽沢横浜国大~(直通列車)~武蔵小杉~(横須賀線や湘南新宿ライン)~横浜~(京浜東北線)~鶴見」だけ。それ以外は規則上は微妙か、あるいは不可能。不正乗車と判断される可能性も高いから、注意が必要だ。

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