「箱根ゴールデンコース」60周年 災害からの復旧とコロナ禍のなかで観光再興目指す

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小田急グループによる観光コース「箱根ゴールデンコース」(神奈川県箱根町)が、9月7日に開通60周年を迎える。

7月23日に全線の運転を再開した箱根登山電車。【撮影:草町義和】

近年は自然災害が相次いでいたが、このほどコース全区間の復旧が完了。新型コロナウイルス禍のなか、小田急グループや沿線の観光業者は観光事業の再興に取り組んでいる。

■避難所として使える駅にリニューアル

箱根ゴールデンコースは、風光明媚(めいび)な箱根山の周辺を一周する観光コース。箱根湯本駅から箱根登山鉄道の鉄道線(箱根登山電車)と鋼索線(箱根登山ケーブルカー)、窓外に富士山も見える箱根ロープウェイ、箱根観光船の芦ノ湖航路(箱根海賊船)、箱根登山バスと、さまざまな交通機関を乗り継いで箱根湯本駅に戻る。

東京都心からは小田急の特急ロマンスカーでアクセスできる。【撮影:草町義和】
箱根ロープウェイのゴンドラからは富士山も見える。【撮影:草町義和】

東京都心から箱根湯本駅までは小田急電鉄小田原線の列車が乗り入れており、特急ロマンスカーを使えば1時間半ほどでアクセスできる。

2015年、箱根山の噴火警戒レベル上昇に伴い、箱根ロープウェイが長期運休に。全線再開したのは1年後の2016年だった。昨年2019年5月にも噴火警戒レベルの上昇を受け、再び運行を停止している。

さらに同年10月に台風19号、襲来。箱根登山電車の宮ノ下~小涌谷間で蛇骨陸橋が流出するという甚大な被害が発生した。箱根ロープウェイは同月26日に再開したが、箱根登山電車は箱根湯本~強羅間の運休が長期化。代行バスの運転によりコースの連続性は確保されたが、さまざまな乗り物を楽しめるというゴールデンコースの特徴がそがれた格好になった。

しかし、箱根ゴールデンコースの60周年を控えた今年2020年7月23日、箱根登山電車が当初の想定より数カ月早く復旧。これに先立つ3月20日には、箱根登山ケーブルカーに新型車両が導入された。

また、ケーブルカーとロープウェイの接続点となる早雲山駅が7月9日にリニューアルオープン。駅舎は足湯付きの展望スペースを設けたほか、ケーブルカーのホームに昇降バー式ホームドアを設置して安全性を向上。火山活動が活発になったときには一時的に避難所として活用できるよう、300人程度を収容できる広いスペースを確保した。

新型車両が導入された箱根登山ケーブルカー。【撮影:草町義和】
リニューアルされた早雲山駅。【撮影:草町義和】
早雲山駅のケーブルカーホーム。昇降バー式のホームドアも整備された。【撮影:草町義和】
駅舎は大勢の人が一時的な避難所として利用できるよう広いスペースが確保されている。【撮影:草町義和】
駅舎には足湯付きの展望スペースもある。【撮影:草町義和】
かつての早雲山駅舎。【撮影:草町義和】

単にサービスの向上を図っただけでなく、災害が相次いだこれまでの経験を生かしたといえるだろう。

■復旧と60周年機にさまざまなキャンペーン

小田急グループは箱根登山電車の復旧と箱根ゴールデンコース60周年を機に、さまざまな観光キャンペーンを実施している。

通常は箱根登山電車の小田原~箱根湯本間で運転されている小田急の「赤い1000形車両」が、8月1日から小田急電鉄の全線で運用を開始。車内に箱根の風景写真を掲出して箱根観光をアピールしている。

9月からは「箱根フリーパス」利用者に限り、沿線6館の美術館を自由に入退館できる「ミュージアムフリーパス」を枚数限定で発売する予定だ。

また、箱根一帯を物語の舞台として描いたアニメ作品『エヴァンゲリオン』とのコラボ企画も、実施期間を9月30日まで延長。コラボスタンプラリーなどが行われている。

■老舗ホテルもリニューアル

自然災害とは直接関係しないが、宮ノ下エリアの富士屋ホテルも7月15日、耐震補強工事を完了して2年ぶりに営業を再開した。明治期の1878年にオープンした老舗ホテル。唐破風を採り入れた和洋折衷の本館など、レトロ感あふれる建築物が特徴だ。1960年代には、のちにロッキード事件で知られることになる小佐野賢治が率いる国際興業の傘下に入った。

耐震補強工事を完了して営業を再開した富士屋ホテル。【撮影:草町義和】

同ホテルの建物の多くは国の登録有形文化財に指定されていることから、外観には大きな手を加えず、壁や柱に補強材を入れるなどして耐震性を向上。148室あった客室は一部を統合、集約して120室に減らし、水回りを中心に改修した。西洋館は改修中にオープン当初の壁の色がピンクだったことが分かり、4室の壁をピンクで復元している。

このほか、ホテル内の史料展示室を「ホテル・ミュージアム」としてリニューアル。改修により新たに発見された経営資料や書簡、幻に終わった新築・建替計画の図面などを展示している。

ピンク色の壁が復元された客室。【撮影:草町義和】
新たに発見された新築・建替計画の図面。【撮影:草町義和】
「ホテル・ミュージアム」の歴史紹介コーナーにある小佐野賢治の写真。【撮影:草町義和】

富士屋ホテルの関係者によると、取材した7月8日時点では、再開初日の客室は予約で満室。それ以外の日も満室の日があるとしていた。ただし新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、客室稼働率を7割程度に抑えているという。

■西武との激しい競争のなかで確立

箱根は古くから風光明媚(めいび)な温泉地として発展した。戦後は西武グループと小田急グループ(実質的には小田急グループの背後にいた東急グループ)が箱根の観光コース開発で激しい競争を繰り広げ、それぞれ独自の観光コースを開発する。

西武の観光コースに整備された伊豆箱根鉄道の十国峠ケーブルカー(車両は2005年時点のデザイン)。【撮影:草町義和】

小田急グループの観光コースは60年前の1960年9月7日、箱根ロープウェイの全通で完成し、箱根ゴールデンコースと名付けられた。

箱根町の入込観光客数は、1991年の約2200万人をピークに減少しているが、2000年代は前半が約1900万人で安定。後半は2000万人に増えた。2010年代に入ると訪日外国人観光客の増加もあり、2100万人を超えることも。ただ、自然災害が発生した年は大幅に減少しており、2011年(東日本大震災)と2015年(噴火警戒レベル上昇)は1700万人台まで落ち込んでいる。

今年2020年も、新型コロナウイルスの影響で観光客の大幅な減少が懸念される。前述した富士屋ホテルも満室日はあるものの、大半が日本人客。近年の観光客の増加を担っていた外国人客の予約はほとんどない。

箱根の入込観光客数。【作成:草町義和/参考:箱根町の統計資料】

新型コロナウイルスの影響で観光客が大幅に減少しているなか、箱根の観光客数がどう推移するか、注目される。

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