特急「踊り子」「湘南」に新着席サービス 運転終了「湘南ライナー」との料金差は?



JR東日本が来年2021年春のダイヤ改正で、東海道線系統の特急列車と通勤ライナーに大なたを振るう。伊豆特急「踊り子」の車両統一に加え、通勤客向けの特急「湘南」を新設。通勤ライナーの「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」が、特急「湘南」に代わる形で運転を終了する。同社が今年2020年11月12日、新しい運行体制とサービスの概要を発表した。

来春のダイヤ改正をもって運転を終了する「湘南ライナー」。【画像:草町義和】

「湘南ライナー」「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」は、新宿・東京・品川~小田原間で運転されている通勤客向けの快速列車。グリーン車自由席と普通車で構成されている。車両は国鉄時代に開発された185系電車か、すべて2階建ての215系電車で、いずれも老朽化が進んでいる。

普通車は座席定員制で、乗車券のほか着席保証のライナー券(520円)を別途購入すると利用できる。近年増えている「座れる通勤列車」の先駆けといえる列車だ。しかし、新たに新宿・東京~小田原間で運転を開始する通勤客向けの特急「湘南」に置き換わる形で廃止される。

特急「湘南」は、「踊り子」への導入が進む特急車両のE257系2000・2500番台電車を使用。中央本線などで使われていた特急車両をリニューアルしたものだが、185系や215系よりは新しい。

座席はグリーン車指定席と普通車指定席で構成される全席指定となり、普通車自由席は設けられない。「踊り子」も来年2021年春のダイヤ改正を機に車両をE257系のリニューアル車に統一し、全席指定に変わる。

「踊り子」で導入が進むE257系が「湘南」にも導入される。【画像:JR東日本】

一方、「踊り子」「湘南」の普通車指定席は、常磐線や中央本線の特急と同様の新しい着席サービスが導入される。

特急列車の普通車指定席は、乗車券類のほか、列車・区間・座席を指定した指定席特急券も別途購入する必要がある。「新しい着席サービス」では指定席特急券に加え、列車・座席を指定しない特急券(座席未指定券)を購入して利用することも可能。空席があれば座ることができ、空席がない場合はデッキなどを利用することになる。座席が空いているかどうかは、席の上に設置されているランプで確認できる。

「踊り子」「湘南」の指定席特急券と座席未指定券は同額。「通常期」「繁忙期」「閑散期」といった季節による区分もなく、年間通じて同額だ。座席未指定券を購入後、指定席券売機やみどりの窓口で追加料金なしに座席指定を受けることもできる。ただし、乗車してから普通車の特急券を車内で購入する場合、事前購入の特急券より高くなる。

■キャンペーン中は安くなるケースも

現在の「湘南ライナー」などの通勤ライナーに代わって特急「湘南」が運転されるため、車両が新しくなる。しかし、それ以外に気になるのが「料金差」だ。

「踊り子」「湘南」普通車指定席の新しい特急料金は、事前購入の場合で50kmまで760円、100kmまで1020円、150kmまで1580円。車内購入はこれより260円高くなる。乗り入れ先の伊豆急行線内は一律520円、伊豆箱根鉄道線内は一律200円だ。

「踊り子」「湘南」の新しい指定席特急券・座席未指定券の金額。【画像:JR東日本】

新しい特急料金(事前購入)と現行の特急料金(通常期)を比べると、東京~小田原間はいまより460円安く、東京~熱海間は310円安い。一方、通勤ライナーのライナー券との比較では、東京~小田原間で500円高く、ほぼ2倍になる。

ただ、利用方法によっては、もう少し差が縮まる。

「踊り子」「湘南」の指定席特急券は「えきねっとチケットレスサービス」での購入にも対応。スマートフォンで座席指定・決済の手続きを行うことができ、紙の切符を購入することなく乗車できる。

チケットレスサービス利用時の料金は、所定の特急料金(事前購入)の100円引き。これに加え、えきねっとのポイントが30ポイント(75円相当)たまる。「踊り子」「湘南」の指定席の発売はほかの列車の指定席と同様、乗車日1カ月前の10時からだが、チケットレスサービスでは最大2カ月先までの複数日をまとめて申し込める事前受付サービスも利用できる。

ちなみに、JR東日本は「踊り子」「湘南」へのチケットレスサービスの導入にあわせ、開始記念キャンペーンを実施する。2021年9月30日乗車分までの申込・変更操作(操作日基準)を行った場合、「踊り子」「湘南」の普通車の特急料金は300円引きに。50kmまで460円、100kmまで720円、150kmまで1280円になる。

この場合、東京~大船間(46.5km)なら、現在運転されている「湘南ライナー」などのライナー券より60円安い。新着席サービスやチケットレスサービスの導入をPRするとともに、事実上の激変緩和措置といえるだろう。