地理学者の青木栄一さん死去 「鉄道忌避伝説」を研究



地理学者で東京学芸大学名誉教授の青木栄一さんが5月4日、死去した。87歳。日本地理学会などが明らかにした。

現在の東京都品川区出身。千葉大学を卒業後、東京教育大学の修士課程と博士課程を修了し、東京学芸大学や駿河台大学の教授を務めた。鉄道マニアとしても知られ、鉄道誌『鉄道ジャーナル』にローカル線の経営や海外の保存鉄道などに関する記事を寄稿した。

また、日本の鉄道の黎明(れいめい)期、鉄道システムへの理解不足から各地で建設反対運動が巻き起こって建設ルートが変更されたとする都市伝説(鉄道忌避伝説)に早くから疑問を呈し、当時の史料や文献の研究によって鉄道忌避伝説のほぼすべてが実際には存在しなかったとした。

国鉄分割民営化の議論では、国鉄再建監理委員会が示した6地域の分割案について、分割案が発表された直後の論文(『鉄道ジャーナル』1985年9月号)で「幹線や大都市周辺の路線で生ずるであろう黒字によって、地方交通線の赤字を埋めようとするやり方で、現在の国鉄で行っているやり方と少しも変わっていない」と批判した。

その一方、個々の路線のニーズにあわせた運転計画や運賃格差の設定という面では、国鉄当局がまとめた再建基本方策(地域分割は行わずローカル線を路線ごとに分離する案)を「合理的で、国鉄再建法の精神を生かしている」としていた。