「10年後の経営自立目指せ」国交相がJR四国に指導 高速道路整備などで利用者減少



国土交通省の赤羽一嘉大臣は3月31日、JR四国の半井真司社長に対し、約10年後の2031年度の経営自立を目指して経営改善を取組を進めるよう、文書で指導した。

JR四国の特急列車。【撮影:草町義和】

JR四国は2011年度に10年間の経営自立計画を策定。最終年度となる2020年度には3億円の経常利益を上げて赤字経営から脱却することを目指していた。

2018年度までは経営自立計画に沿って推移してきたが、沿線の少子高齢化のほか、国が主体となってきて進めてきた高速道路の整備などでJR線の利用者が減少。このほど認可された2020年度の事業計画では2019・2020年度の2年間連続で経常損益が経営自立計画を大きく下回り、赤字経営からの脱却という目標を達成できない見込みになった。

このため国交相は、次の五つの取組を行うよう文書で指導した。

(1)経営自立計画を達成できなかった原因を分析して報告すること
(2)2020年度の事業計画に記載した取り組みの実施状況について四半期ごとに国交省鉄道局とともに検証を行い、情報を開示すること
(3)10年間(2021~2030年度)の長期経営ビジョンと5年間(2021~2025年度)の中期経営計画を2020年度中に策定し、2031年度の経営自立を目指すこと
(4)外部の厳しい意見・アドバイスを経営に反映させる仕組みを構築すること
(5)2021年度から5年間の事業計画を策定し、地域関係者と一体となって利用促進やコスト削減、実証実験や意見聴取などの取組を行うこと

(5)では「利用者数等の目標に対する達成度合い等を踏まえ、事業の抜本的な改善方策についても検討を行うこと」としており、事実上、利用者数が目標に達成しなければ路線の廃止も含めて検討することを求めている。

JR四国と同様に経営が悪化しているJR北海道は、1日1kmの平均通過人員(旅客輸送密度)が2000人未満の線区を自社単独では維持できないとし、500~2000人の線区は沿線自治体が線路施設を保有する上下分離方式を導入するなどして経営の改善を図り、500人未満の路線は鉄道を廃止してバスに転換することを目指している。

JR四国の場合、2018年度の旅客輸送密度が500人を下回っているのは、予讃線の向井原~伊予長浜~伊予大洲間(381人)と牟岐線の牟岐~海部間(212人)、予土線の全線(312人)。土讃線の須崎~窪川間と鳴門線の全線、牟岐線の阿南~牟岐間は500人を超えているが、2000人は下回っている。

一方、日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律の規定に基づく国の支援が2020年度末で終了することから、国土交通省は国の支援を継続するための法律案を国会に提出することを別途検討するとしている。国が推進してきた高速道路の整備で鉄道の利用者が減少し、JR四国の経営悪化の一因になっていることについては、指導文書では触れていない。