北海道新幹線の札幌延伸「少なくとも8年延期」さらに遅延も 開業時期は依然不透明



国土交通省の「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する有識者会議」は3月13日、工事が難航している北海道新幹線の札幌延伸について「完成・開業は概ね2038年度末頃の見込み」などとした報告書案を了承した。従来の予定から少なくとも8年延期されることが確実になった。

北海道新幹線の列車。【画像:中村昌寛/写真AC】

北海道新幹線は新青森~新函館北斗が2016年に開業。新函館北斗~札幌は2012年の工事実施計画認可を経て着手し、2030年度末の完成・開業を予定して工事を進めていた。しかし一部の工区で工事が難航。建設主体の鉄道・運輸機構は2024年5月、「2030年度末の完成・開業は極めて困難」と国土交通大臣に報告し、これを受けて有識者会議が報告内容の精査を行っていた。

有識者会議の報告書によると、新函館北斗~新八雲(仮称)の渡島トンネルや長万部~倶知安の羊蹄トンネル、新小樽(仮称)~札幌の札樽トンネルなど3トンネル8工区が「クリティカル工区」で、工事の遅延がとくに大きくなっている。いずれの工区でも工事自体が難航にしているのに加え、労働時間規制による工程の遅延がみられる。

北海道新幹線のトンネルの位置。【画像:国土交通省】

渡島トンネルの台場山工区の場合、当初は2024年9月の工事完了を予定していた。しかし地表面の陥没で工事が1年1カ月中断。ほかにも地質不良で工程が4年3カ月延びるなどしており、報告書は短縮策を講じても工事完了は2030年11月の見込みとした。同トンネルの南鶉工区も対策土への対応による工事中断などが影響し、当初予定より5年延びて2030年5月の工事完了見込みとしている。

渡島トンネルの台場山工区。【画像:鉄道・運輸機構】
渡島トンネルの南鶉工区(大量湧水の発生状況)。【画像:鉄道・運輸機構】

羊蹄トンネルの比羅夫工区では、予定ルート上に大きな岩が出現して掘削機が停止。岩を除去するための工事を追加するなどして工程が3年以上延びた。報告書では工程短縮策の実施を前提に工事完了見込みを当初予定より2年3カ月長い2030年1月とした。札樽トンネルも地質不良などの影響で工事が数年単位で遅れており、報告書は富丘工区の工事完了を当初予定より3年4カ月長い2028年10月、札幌工区は1年7カ月長い2030年5月の工事完了とした。

各工区の土木工事の工程検討結果。【画像:国土交通省】

今後の工事で発生する可能性が高いリスクも含めて全体の工程を検討した結果、土木工事の完了は当初計画より6年2カ月遅れの2030年11月に。軌道・電気工事の完了も労働時間規制や人手不足を考慮して2035年11月とし、当初工程より6カ月長くなるものとした。工事完了後の監査・検査は最高速度を320km/hにするための試験の増加などで1年3カ月延びて2039年2月完了とし、これにより完成・開業をおおむね2038年度末ごろの見込みとした。

この検討の結果、報告書は「2030年度末の完成・開業は困難との(鉄道・運輸)機構の報告内容は合理的」と結論付けた。その一方、報告書は今後のリスクとして「更なる地質不良や岩塊の出現」「受注できる企業が限られることによる不調不落」「設備等の損傷・盗難被害発生による対応」を挙げ、さらに数年単位で工事が遅延する可能性も示した。

渡島トンネル台場山工区の全体工程の検討結果(当初予定の工程との比較)。【画像:国土交通省】

有識者会議の検討結果を受けた国土交通省の中野洋昌大臣は3月14日、鉄道・運輸機構に対し「今後の見通しについて、沿線自治体等の関係者に丁寧かつ速やかに説明を行うこと」「トンネルの貫通に一定の目途が立った段階で、改めて全体工程を精査すること」「沿線自治体等の関係者と一丸となって、一日も早い完成・開業を目指すこと」の3点を指示した。

中野国交相の指示を受けて鉄道・運輸機構は「完成・開業に大きな遅れが生じる見通しとなったことについて、建設主体として、心よりお詫び申し上げます」と謝罪。有識者会議の検討結果について「明確な開業時期が今回示されるに至らなかった状況については心苦しく思っております」とし、開業時期は依然として不透明で確定していないとの認識を示した。そのうえで「なるべく早く具体的な開業時期が定められるよう、トンネル等の工事を着実に進め、トンネルの貫通に一定の目途が立った段階で、改めて全体工程を精査して参ります」とコメントした。

営業主体のJR北海道の綿貫泰之社長も3月14日、「開業時期が大幅に遅れることについては大変残念」とコメント。開業準備スケジュールの見直しや経営への影響の確認を進める考えを示した。

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