西武鉄道「運賃改定」申請 24年ぶり、遠距離は一部据え置きも



西武鉄道は3月14日、国土交通大臣に鉄道旅客運賃の上限変更認可を申請した。平均で10.7%値上げする。

西武線の列車。【画像:taso583/写真AC】

普通旅客運賃・定期旅客運賃ともにバリアフリー料金を廃止し、そのうえで値上げする。普通旅客運賃の上限は初乗り(1~4km)の場合、現行運賃(バリアフリー料金含む)がICカード157円・切符160円なのに対し改定後はICカード169円・切符170円。10~12円の値上げになる。

一方で遠距離区間は値上げ幅を抑える。77~81kmの区間は現行額がICカード796円・切符800円なのに対し、改定後はICカード・切符ともに800円。ICカードは4円の値上げで、切符は現行額の据え置きになる。

普通旅客運賃の現行額と申請(改定)額。【画像:西武鉄道】
おもな区間の普通旅客運賃。【画像:西武鉄道】

定期旅客運賃の上限は大人・1カ月の場合、13~16kmの区間で通勤定期が1020円値上げの1万720円。通学定期は家計負担に配慮するとして全距離帯で現行額を据え置く。

定期旅客運賃(通勤・大人・1カ月)の現行額と申請(改定)額。通学定期は現行額を据え置く。【画像:西武鉄道】

西武鉄道は「都心部・郊外部での設備投資に要する費用を薄く広くご負担頂くため、短中距離帯は概ね一定割合で偏らない改定とする一方、遠距離帯は観光需要創出・秩父地方活性化のため改定幅を抑制する」としている。また、バリアフリー料金は廃止するが廃止後もバリアフリー関係の施設整備は継続して実施するとしている。

西武鉄道によると、テレワークの定着や少子高齢化の進展などで利用者はコロナ禍前の水準には戻らない見込み。人手不足や資材価格高騰など経費増加の懸念もあり、厳しい経営環境が続く。一方で老朽設備の更新やバリアフリー設備の整備なども必要なことから、運賃改定を申請したという。

認可された場合、西武鉄道は来年2026年3月に運賃を改定する考え。消費税率の引き上げによるものを除くと2002年以来24年ぶりになる。同社によると、2026~2028年度の3年間平均の鉄道収支は現行運賃(バリアフリー料金含む)のままなら103億3800万円の赤字が見込まれるのに対し、運賃を改定した場合は赤字額が24億7900万円に縮小する見込みという。

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