ゆとりーとライン「自動運転」目指し実証実験中 現行「鉄道+バス方式」は困難



名古屋市は、ゆとりーとラインの高架専用道(ガイドウェイバス志段味線)への自動運転技術の導入に向けた実証実験を昨年2023年10月から実施している。今年2024年12月の実証実験では一般市民向けのモニター試乗会もあわせて行われる。

ゆとりーとラインの高架専用道を走るバス。【撮影:草町義和】

12月の実証実験は、名古屋市が所管する守山南部処分場(愛知県尾張旭市)の管理通路(約600m)で実施。高架専用道の幅や急カーブを部分的に再現して自動運転を行う。車両はアイサンテクノロジ―が保有する大型自動運転バスを使用。自動運転レベルはレベル2で、自動運転システムがハンドル操作やアクセル・ブレーキを行うが、緊急時は運転士が介入する。

今回の実験では、自動運転用のセンサーを使用した各種誘導方式を検証。道路に敷設する磁気マーカーで車両を誘導する方式や、複数の人工衛星からの情報に基づき位置や距離を測定するGNSS方式、3D地図で位置の推定を行う3Dマップ方式について、車両制御の精度を検証する。

実験期間は12月16~27日。一般市民向けモニター試乗会は12月24・25日に行われる。

アイサンテクノロジーが保有する大型自動運転バス。【画像:アイサンテクノロジー】

ゆとりーとラインは2001年に開業した、名古屋市と愛知県の春日井市・尾張旭市を結ぶバス。運行区間は大曽根~小幡緑地~志段味・高蔵寺方面で、名古屋市内の大曽根~小幡緑地6.5kmは高架専用道、小幡緑地~志段味・高蔵寺方面は一般道を走る。「ガイドウェイバスシステム」と呼ばれる交通システムを採用している。

このシステムでは、案内輪を搭載した特殊なバスを使用。高架専用道に併設したガイドレールに案内輪を接触させることで車両を誘導する。一般道は案内輪を収納して通常のバスとして走る。交通量が多い都市中心部では高架専用道を走ることで定時性を確保。利用者の少ない郊外部では一般道を走行することで整備コストを抑えるといったことができる。名古屋市は「鉄道とバスの利点を組み合わせたシステム」としている。

ゆとりーとラインの場合、高架専用道は第三セクターの名古屋ガイドウェイバスが運営。専用道の基本的な構造は自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT)の専用軌道と同じため、法令上は軌道法に基づく軌道として扱われている。一般道区間は名古屋市交通局が運行している。

2012~2014年度には開業時に導入された車両を更新するための新型車両が導入された。しかし、案内輪を搭載した特殊な車両を製造できる技術者が引退したこともあり、今後の車両の更新や増車が難しい状況だ。その一方で沿線人口の増加に伴い、ラッシュ時の混雑が深刻化している。

2023年10・11月に行われた大型自動運転バスの実証実験の様子。磁気マーカー誘導方式などを検証した。【画像:名古屋市】

このため、名古屋市は車両の次期更新に向け「近年技術開発が進展している自動運転技術を搭載した汎用性のあるバス」の導入を検討している。

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