東海道新幹線「ブレーキの点検方法に誤り」保守車両の衝突・脱線事故



JR東海は8月5日、東海道新幹線で発生した保守用車両の衝突・脱線事故の原因について、保守用車両のブレーキ力が低下していたためと発表した。保守用車両のブレーキ装置の点検方法に誤りがあり、ブレーキ力の低下に気づいていなかった。

衝突事故発生時のモーターカー(中央)とマルタイ(右)。【画像:JR東海】

事故は7月22日の3時37分、豊橋~三河安城の上り線(東京起点292.323km、愛知県蒲郡市)で発生。大阪方面から東京方面の豊橋保守基地に向け走行していた保守用車両が、この保守用車両に合流するため待機していた別の保守用車両に衝突した。この影響で7月22日は東海道新幹線の浜松~名古屋が終日運休になり、約25万人に影響した。

走行していた保守用車両は、線路に敷き詰める砕石(バラスト)を運んで散布する砕石運搬散布車編成で、東京寄りからモーターカー1両+砕石運搬散布車6両+モーターカー2両の構成。衝突された側の保守用車は線路のゆがみを直すマルチプルタイタンパー(マルタイ)だった。衝突で砕石運搬散布車編成の先頭モーターカー1両の1軸が脱線し、マルタイも3軸が脱線した。

砕石運搬散布車編成の運転者は事故現場の約1.2km手前でブレーキをかけた。この時点の速度は41km/hだったが、ブレーキが十分にかからなかったうえに20パーミルの下り勾配で、事故現場の約750m手前の地点では46km/hに増速。非常ブレーキをかけても減速せず、事故現場の約370m手前では追突防止装置による非常ブレーキも使用したが間に合わず、マルタイに衝突した。

事故後に各車両のブレーキ力を測定したところ、砕石運搬散布車6両のうち3両でブレーキ力が大きく低下していたことを確認。残る3両は衝突による破損で測定不能だった。モーターカーのブレーキ装置は3両とも異常がなかった。

事故当日の状況。【画像:JR東海】
保守用車両の構成。【画像:JR東海】

JR東海によると、ブレーキ動作の長さ(ストローク量)を点検する際は最大圧力(10ノッチ、380kPa)でブレーキをかけた状態で行うというのが保守用車両メーカーの想定だったが、JR東海は7ノッチ、230kPaの圧力しかかけていなかった。ブレーキ装置の調整が必要かどうかを判定する方法にもメーカーとJR東海で認識の差があり、ストローク量を24mm程度過小評価していたという。

こうしたことから保守用車両のブレーキ力が低下していたにもかかわらず、JR東海はそれに気づかずに保守用車両を使用し続け、今回の脱線に至ったとみられる。

JR東海は「保守用車の仕業点検におけるストローク量確認時のルールが不明確であるなど、管理体制が不十分であった」とし、対策としてストローク量確認時は最大圧力でブレーキをかけるなどのルールをマニュアルなどで明文化するとしている。

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