熊本市は7月23日、地域公共交通計画の策定に向け熊本市電の延伸を検討する考えを明らかにした。現在は健軍町停留場から市民病院に延伸する東町線(仮称)の計画を進めているが、さらに3方面4ルートで延伸を検討する。
熊本市は地域公共交通の将来像として「基幹、地区間、地域内公共交通の3層に階層化したネットワーク」を掲げ、このうち基幹公共交通は鉄道・軌道(市電)・幹線バスで「中心市街地と地域拠点、乗換拠点を結ぶネットワーク」としている。
基幹公共交通は熊本市の中心部から郊外に延びる8軸を設定。鉄道(JR九州・熊本電鉄)がすでに通っている軸は鉄道の機能強化を検討し、鉄道が通っていない軸は「まずは市電延伸を検討」するとした。
延伸を検討するのは8軸のうち、東部方面の「(4)小峯・長嶺方面」と「(5)健軍・益城方面」、南熊本駅方面の「(6)嘉島・城南方面」、田崎方面の「(8)小島・城山方面」。小峯・長嶺方面は専用レーンの整備も検討する。
このほか、合志・堀川方面(熊本電鉄)はJR鹿児島本線・熊本市電・熊本電鉄が乗り入れる上熊本駅の結節強化を検討。楠・光の森方面(JR豊肥本線)では熊本市電との交差地点である新水前寺駅の結節強化を検討する。
熊本市は市電の延伸なども含め地域公共交通の今後の展開について検討を進め、来年度2025年度にも「目指す地域公共交通の将来像」の案を取りまとめる考えだ。
熊本市は2015年度に3方面5ルートで市電の延伸を検討し、このうち自衛隊ルートと南熊本ルートを有力案として選定。翌2016年度には自衛隊ルートを優先的整備の検討対象に決め、現在は東町線として計画を推進している。熊本市が今回示した延伸検討ルートは、いずれも2015年度に検討対象になった5ルートのうち自衛隊ルート(東町線)を除く4ルートとほぼ同じ方向だ。
熊本市の大西一史市長は7月18日に熊本県の木村敬知事と会談し、熊本市内の交通渋滞の解消に向けた取り組みを進めていくことで合意している。大西市長は7月24日の定例記者会見で「市電の延伸は過去からずっと検討されていて、5ルートも新しい話ではない」としつつ、「(延伸)ルートも含めて将来的な姿を示すことで、知事と合意をした自動車の1割削減と渋滞半減、公共交通の利用を2倍にしていくことにつながっていくと考えている」と話し、市電のさらなる延伸による渋滞緩和への期待感を示した。
《関連記事》
・熊本市電「運行公社」設立 持続安定経営に向け上下分離方式を導入
・熊本市電「上下分離」移行に向け実施計画を市議会提出 延伸区間「東町線」も