福岡の都心部に「LRT導入」専用走行空間の確保で渋滞「8.6倍」に 福岡市が試算



福岡市は都心部で公共交通の専用走行空間を確保した場合の自動車交通への影響を試算し、6月18日に市議会で試算結果を報告した。

博多駅前の住吉通りを走るLRT車両のイメージ。【撮影:草町義和、加工:鉄道プレスネット】

同市が進めている福岡市都市交通基本計画の改定に向けた検討の一環で、路面電車方式の軽量軌道交通(LRT)を導入する場合のケーススタディ。都心部を循環するルートを想定し、ルート上の道路の車線を減らしてLRTの専用走行空間を確保した場合、大規模な渋滞が発生するなど自動車交通に大きな影響があるとした。

専用走行空間を確保する道路は大博通り・渡辺通り・住吉通り・那の津通りの循環ルートを想定し、現状から上下各1車線を削減。ライトライン(宇都宮市・栃木県芳賀町)の事例を参考に自動車から公共交通への転換を3.6%見込み、都心循環のバス高速輸送システム(BRT)は現状の全便数が転換されるものとした。

この条件でルート上15カ所の交差点を代表交差点として渋滞の長さや走行性(通過時間・信号待ち回数)を試算したところ、渋滞の影響を受ける交差点(夕方ピーク17時台)は現状の10カ所から4.5倍の45カ所に拡大した。

蔵本交差点(北東方面)の場合、渋滞の長さが現状140mなのに対し、専用走行空間の確保後は約8.6倍の計1200mに。渋滞を抜けるまでにかかる通過時間も現在の約2分から5倍以上の約11分に伸び、信号待ち回数は現在の約1回から約4回に増えた。

専用走行空間の確保前と確保後の比較(夕方ピーク17時台)。【画像:福岡市】

福岡市はこの調査について、ほかの都市でLRTを導入している事例があることを踏まえ、LRTを導入するうえで専用走行空間の確保が必要となることから「都心部交通対策の今後のあり方を検討するにあたり、整理するもの」としている。

福岡の都心部ではかつて西鉄が路面電車を運行していたが、1979年までに全廃。2016年から福岡市と西鉄が都心循環BRT「Fukuoka BRT」を運行しているが、バスの専用レーンは設けておらず、一部の停留所のみ停車する快速運行を行っている。

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