秩父鉄道「初乗り200円」に 28年ぶり運賃値上げ、急行料金も



秩父鉄道(埼玉県)は5月23日、国土交通省の関東運輸局長に鉄道事業旅客運賃の上限変更認可を申請した。認可された場合、秩父鉄道は10月1日に運賃を値上げする。消費税率の改定による変更を除くと運賃値上げは1996年以来、28年ぶり。

秩父鉄道の列車。【撮影:草町義和】

普通旅客運賃の上限は初乗り(1~4km)が現行170円のところ30円値上げの200円。51~53kmは80円値上げの1000円、72kmは130円値上げの1200円になる。定期旅客運賃の上限は通勤・大人・1カ月の場合、1~4kmが1310円値上げの7560円。31~32kmでは4170円値上げの2万3550円になる。通学定期券は家計への負担を考慮するとして現行運賃のままにする。

増収率は2024~2026年の3年間合計で15.3%。定期外運賃は15.5%で通勤定期は22.5%になる。秩父鉄道は実際に旅客から収受する運賃(実施運賃)について、普通旅客運賃・定期旅客運賃ともに上限と同額に設定するとしている。

普通旅客運賃の現行運賃と申請上限運賃。【画像:秩父鉄道】
通勤定期旅客運賃(大人・1カ月)の現行運賃と申請上限運賃。通学定期旅客運賃は改定しない。【画像:秩父鉄道】

このほか、秩父鉄道は認可後に届け出る料金も改定する方針。急行料金は大人が現行210円のところ90円値上げして300円にする。一方で子供は10円値下げして100円にする。急行回数券も同様で、大人は900円値上げの3000円、子供は100円値下げの1000円。急行定期券は1カ月の場合、2670円値上げの1万円だ。入場料金は初乗りと同額で30円値上げの200円。

秩父鉄道によると、同社鉄道線の輸送人員は1996年度が1110万9000人だったのに対し、2020年度はコロナ禍の影響で529万4000人とほぼ半減。旅客収入も2018年度の実績に対し2020年度は61.5%、2022年度は85.7%で、依然としてコロナ禍前のレベルに回復していない。今後もテレワークの定着や沿線就学人口の減少などで回復は限定的とみられる。

こうしたなか、保線期間の更新や耐震補強工事、踏切改良など設備の維持に相当額の投資が必要で、さらに電気料金などの価格上昇や沿線人口の減少など、さまざまな要因で鉄道事業の継続が難しい状況。このため運賃の値上げを申請したという。

秩父鉄道は「今後とも安全輸送の確保並びに積極的な旅客誘致及び旅客サービスの向上(決済手段の多様化、便利な周遊型デジタルチケットの新規作成)に引き続き努めてまいります」としている。

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