青函トンネル共用区間「新幹線物流の拡大で高速化」JR北海道、荷物車の導入など検討へ



JR北海道は新幹線と在来線が線路を共用する青函トンネル(青森県・北海道)について、「新幹線物流」の拡大などにより新幹線の高速化を目指す方針を固めた。4月1日に公表した「JR北海道グループ中期経営計画2026」で、2026年度以降の構想の一つとして盛り込んだ。

荷物列車のイメージ(上越線で運行されていたクモニ83形電車4両の荷物列車)。【撮影:草町義和】

青函トンネルとその前後の線路を含む約82kmの区間は、新幹線(1435mm軌間)と在来線(1067mm軌間)の列車が走れるよう3本のレールが敷かれ、北海道新幹線の旅客列車やJR貨物の在来線貨物列車が走る共用区間になっている。新幹線列車と貨物列車のすれ違いで生じる気圧変動で積載コンテナに影響が出る可能性を考慮し、共用区間内では新幹線の最高速度を140km/h(青函トンネル内は160km/h)に制限。高速化の障害になっている。

現在は新幹線列車と貨物列車が走る時間帯を分けて新幹線列車を高速運行する「時間帯区分方式」を部分的に導入。貨物列車の運行本数が少ない年末年始などに限り、新幹線列車の最高速度を210km/hに引き上げている。JR北海道は時間帯区分方式による最高速度を260km/hに引き上げる考えを中期経営計画に盛り込んだ。

さらに中期経営計画では、2026年度以降の構想として「新幹線物流の拡大や在来貨物とのすみ分け等の検討を関係者と連携して進め、新幹線の高速化を目指します」とした。同計画のイメージでは、荷物パレットを車内に並べて搭載できる新幹線タイプの荷物車が「新幹線物流の拡大に向けた検討」として描かれているほか、新幹線のホームからトラックまで同一フロアで荷物パレットを移動できるようにした図も「効率的な荷役の検討」として描かれている。

中期経営計画に掲載された「新幹線物流の拡大に向けた検討」などのイメージ。【画像:JR北海道】

JR北海道は荷物車の導入や荷役効率化などにより、青函トンネルを通過する物流を可能な限り新幹線車両での輸送に切り替えて従来の貨物列車の本数を減らし、新幹線の旅客列車が高速走行できる時間帯の拡大を想定しているとみられる。

青函トンネルの共用による速度制限の解決策としては、ほかにも貨物列車を車両ごと新幹線タイプの車両に搭載して高速走行させる「トレイン・オン・トレイン」を導入する案や、上下線のあいだに隔壁を設置して気圧変動を緩和する案、青函トンネルをもう1本整備して新幹線と在来線を分離する案などがある。しかしいずれも技術的な課題や事業費が膨大になるなどの難点があり、実現していない。

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