岐阜県恵那市などは11月6日、「SL復元検討委員会」を設立した。明知鉄道での蒸気機関車の復活運行構想を再始動するもの。費用や経済波及効果などを改めて確認し、復活運行の可否を判断する。
検討委は恵那市のほか恵那市観光協会や恵那商工会議所、明知鉄道連絡協議会などで構成。国土交通省の中部運輸局や岐阜県事務所長などをオブザーバーに任命し、ソフトバンクとボイラーメーカーの東海汽缶(静岡市)をアドバイザーに任命した。
恵那市によると、検討委の委員長に選任された恵那商工会議所の阿部伸一郎会頭は1回目の会合で「観光地としてSLの復元は大きな目玉。丁寧に事業を進めていきたい」とあいさつしたという。
復活運行が考えられている蒸気機関車は国鉄C12形。1973年まで国鉄明知線(現在の明知鉄道明知線)で運行されていた。運行終了後、国鉄からの貸与により2両が現在の恵那市内で保存されることになり、中央図書館で74号機、明智小学校で244号機が静態保存された。
2012年、明知鉄道沿線の地域住民で構成される「リニアまちづくり明知鉄道沿線住民委員会」を中心に蒸気機関車の復活運行に向けた活動がスタート。リニア中央新幹線の建設を見据えた観光促進策として構想され、中央新幹線の岐阜県駅(仮称)に近接する中央本線の美乃坂本駅まで乗り入れることも考えられた。
2013年にはC12 244を明知鉄道の明智駅に移設。2014年には復活運行の初期費用として5億6800万円、維持費用として年間9000万円かかるという調査結果が出された。
その後、国鉄からC12形の静態保存機を引き継いだJR東海からC12 244の無償譲渡を受け、空気圧縮機を使った駅構内での動態運行を開始。しかし本格的な復活運行には至らず、構想は事実上頓挫していた。
恵那市などによると、2021年にJR東海から追加で蒸気機関車の無償譲渡を受けたことや、今年2023年1月には東海汽缶が蒸気機関車専用の整備工場を開設したことなどが後押しになり、今回の検討委の設立に至ったという。
検討委は今後、取組体制の整理や費用の再確認、経済波及効果の再確認を行い、来年2024年3月までに蒸気機関車の復元の可否を判断する考えだ。
C12形は1932年から1947年にかけ約280両が製造されたタンク式の小型蒸気機関車。線路規格が低いローカル線向けに開発された。真岡鉄道が運営する真岡線(栃木県・茨城県)で66号機が動態保存されており、同線のSL列車「SLもおか」として運行されている。
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