JR東海の新型特急電車「385系」製造へ 中央本線の特急「しなの」383系を更新



JR東海は7月20日、新型の特急型電車「385系」を新製すると発表した。2026年度に量産先行車を完成させ、2029年度ごろの量産車の導入を目指す。

385系のイメージ。【画像:JR東海】

385系は、名古屋~長野を結ぶ中央本線・篠ノ井線の特急「しなの」で現在運用されている383系と同じ振子式を採用。カーブ走行時に車体を傾斜させることで遠心力を緩和し、速達性と乗り心地を両立させる。

現在の383系は雨天による滑走などが発生した場合、カーブ開始位置からの車体傾斜ができず、乗り心地が悪くなるという課題を抱えている。これに対して385系は「次世代振子制御技術」を採用。車両に設置したジャイロセンサーで車両とカーブの位置関係を常に監視し、カーブの開始位置を正確に検知する。

これにより滑走などが発生した場合でもカーブ開始位置からの車体傾斜が可能に。現在の振子制御に比べ乗り心地が約15%改善されるという。

現在の振子制御(左)と385系に導入される次世代振子制御(右)の違い。【画像:JR東海】

また、特急「ひだ」「南紀」に導入された新型のHC85系ハイブリッド気動車と同様、車両機器の稼働状況や故障状況などを遠隔で常時監視する状態監視システム「DIANA」を導入。車内防犯カメラも導入する。

車体の長さやドアの位置は、中央本線の普通列車で運用されている315系電車にあわせる。これにより開口幅の狭いホームドアを採用できるようになり、低コストでホーム上の安全性を向上させることができるようになるという。

車体の外観は「アルプスを翔ける爽風」をテーマにデザイン。前面展望を両先頭車に確保し、「四季を彩る自然の景観に恵まれた中央本線を味わう旅」を演出するという。

量産先行車は8両編成1本を製造。2026年度の完成後、走行試験を約1年間実施して次世代振子制御技術などの確認を行う。量産車は2029年度ごろを目標に投入する方向で検討を進める。

特急「しなの」で現在運用されている383系。【画像:JR東海】

特急「しなの」の383系は1995年にデビュー。1994年から1996年にかけて76両が製造され、最初に製造された車両はまもなく30年を迎える。JR東海の東京広報室によると、老朽化した383系の更新を目的に385系を開発するという。

※加筆しました。(2023年7月20日16時15分)

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