南阿蘇鉄道「上下分離」認定、4月1日から 全線再開に向け準備は最終段階に



国土交通大臣は3月10日、南阿蘇鉄道などが申請していた高森線(熊本県)の鉄道事業再構築実施計画を認定した。これにより同線は4月1日から「上下分離方式」の経営に移行。7月15日の全線再開に向けた準備が最終段階に入った。

高森線の上下分離のイメージ。【撮影・加工:草町義和】

実施計画の認定を受けたのは、南阿蘇鉄道と南阿蘇鉄道管理機構、高森町、南阿蘇村、熊本県。2月20日に申請していた。

現在の高森線は、南阿蘇鉄道が同線の鉄道施設・用地・車両を保有して列車を運行しているが、4月1日からは管理機構が第3種鉄道事業者として「下」の部分になる鉄道施設・用地を保有。南阿蘇鉄道は管理機構から鉄道施設・用地を借り受け、「上」の部分になる車両を保有して列車を運行する第2種鉄道事業者に変わる。

上下分離方式への移行に伴い、南阿蘇鉄道は管理機構に鉄道施設・用地を無償譲渡。管理機構は鉄道施設・用地を南阿蘇鉄道に無償で貸し付ける。鉄道施設の保守管理業務は南阿蘇鉄道が行い、その費用は管理機構が負担する。

国や熊本県は管理機構に対し設備投資費用などを補助。沿線の高森町と南阿蘇村は駅舎を保有して維持管理を行うほか、南阿蘇鉄道と管理機構に対し運営費の負担や設備投資費用などの補助を行う。

高森線の鉄道事業再構築実施計画のスキーム。【画像:国土交通省】

実施計画の計画期間は4月1日から2033年3月31日までの10年間で、鉄道施設や車両の改修・更新(21億円)や鉄道施設の維持修繕の充実(4億円)を図る。パーク&ライド駐車場の整備(立野駅)や駅舎の建替を含む周辺再開発(高森駅)、二次交通網との結節強化、「熊本型観光MaaS」の導入に向けた実証実験なども行う。

1日の運行本数は今年2023年7月15日以降で上下14本とし、このうち2本はJR豊肥本線に直通して利便性の向上を図る。2032年度の年間輸送人員は27万8000人の見込み。実施計画を実施しなかった場合に比べ4万4000人多くなるという。

このほか、南阿蘇鉄道は旅客運賃上限設定認可を実施計画の認定と同日の3月10日に申請した。同社が第1種鉄道事業者から第2種鉄道事業者に変わるのに伴い運賃を改めて設定するための手続きだが、金額の変更はない。

高森線は豊肥本線の立野駅から阿蘇山の阿蘇五岳と外輪山に挟まれた地域を通って高森駅に至る17.7kmのローカル線。2016年に発生した熊本地震で橋梁が損傷するなど甚大な被害が発生し、現在も立野~中松の10.5kmが運休中だ。

もともと利用者が少なく南阿蘇鉄道単独での復旧が困難だったことから、2017年に公設型上下分離方式を導入して復旧することが決定。昨年2022年4月に鉄道施設・用地を保有する一般社団法人として南阿蘇鉄道管理機構が設立された。今回の実施計画の認定により、復旧費の97.5%を国が負担することが正式に確定した。

《関連記事》
南阿蘇鉄道の全線再開「7月15日」に 7年3カ月ぶり、JR豊肥本線への乗り入れも
南阿蘇鉄道の新型車両「MT-4000形」詳細発表、来年1月から乗務員訓練など開始