南阿蘇鉄道の新型車両「MT-4000形」詳細発表、来年1月から乗務員訓練など開始



南阿蘇鉄道は12月28日、新型車両「MT-4000形」の詳細を正式に発表した。 11月に2両(MT-4001・4002)が現地搬入されており、来年2023年1月下旬から試験走行と乗務員訓練が始まる予定。

南阿蘇鉄道の新型車両「MT-4000形」。【画像:南阿蘇鉄道】

新潟トランシス製の一般型気動車で全長約18m、自重31.5t。外装は白をベースに先頭部から側面にかけて青・緑色のラインとロゴマークを配した。青いラインは熊本県中北部を流れる1級河川の白川と沿線に点在する湧水源を表現。緑色のラインは阿蘇五岳をイメージしているという。

ロゴマークの「n」は南阿蘇鉄道の略称「南鉄(nantetsu)」や、阿蘇五岳とその周辺の外輪山をイメージ。ロゴの下にある10個の小さな楕円(だえん)は、熊本地震から復旧して立野~高森の10駅がつながったことを数珠つなぎで表現した。

現在の南阿蘇鉄道の気動車は1両を除き前面にドアがない非貫通型だが、MT-4000形はドアを設置した貫通型。これにより2両以上の編成でも車両間を移動することが可能になった。

行先表示器は高照度フルカラーLEDを採用。必要な情報を交互に表示するほか、目的地により表示色を変えることで視認性を高めた。また、GPSと連動したデジタル運転制御システムも導入。停車駅と走行距離に応じて車内放送と行先表示が自動的に作動する。

夏季の冷房使用時や冬期の暖房使用時に車内の空調効率を高められるよう、客が必要に応じてドアを開閉できる半自動システムを導入。ドアの自動・半自動は、運転席のスイッチにより切り換わる。

定員は115人(着席44人、立席71人)。 車内はロングシートを採用し、着席時には視線の正面に阿蘇の風景が来るようにした。座席や床は明度が低いものを採用することで外の景色を引き立たせるようにした。側壁や天井は明るい木目調を採用することで開放感を演出したという。

MT-4000形の車内イメージ。【画像:南阿蘇鉄道】

バリアフリー対策として車内に車椅子スペースを設け、側壁には巻き取り式の安全ベルトを設置。車椅子での乗降をスムーズに行えるよう車内にもスロープを常備している。ドアの開閉時には予告等が点滅するとともにチャイムが鳴動。ドアが開くときは視覚障害者にも分かりやすいよう、約5秒間隔で音が鳴る。

エンジンはSA6D125HE-2(350PS/2000rpm)、変速機はTACN-22-1631(変速1段・直結2段)を採用。ブレーキは電気指令式空気ブレーキで、従来車の自動空気ブレーキに比べ応答性・整備性を向上させた。設計最高速度は95km/h。

南阿蘇鉄道の自動列車停止装置(ATS)は「ATS-SN」だが、MT-4000形はJR線への乗り入れを考慮し、JR九州の電車や気動車と同じ「ATS-DK」を搭載した。車上装置に線路のデータを記憶させて走行位置・速度をコンピュータで常時監視。速度が速すぎるときは自動的にブレーキがかかる。このほか、周囲の列車に異常を知らせる防護無線を搭載。車両上部には5分間燃焼する発炎筒を新たに設置した。これにより事故発生時の二次災害を防ぐ。

MT-4000形の図と主要諸元。【画像:南阿蘇鉄道】

南阿蘇鉄道が運行する高森線は、2016年の熊本地震で大きな被害を受け、現在も一部の区間が運休している。同線は2023年夏に全線の運転を再開する予定。再開時の外国人観光客の受け入れ態勢を整備するため、新型車両の導入が計画された。

※追記(2022年12月28日18時01分):記事を差し替えました。
※追記(2023年2月4日12時20分):表示不具合のため再アップしました。

《関連記事》
南阿蘇鉄道に「新型車両」MT-4000形、JR線乗り入れと老朽車の更新図る
南阿蘇鉄道の豊肥本線乗り入れ、全線復旧と「同時」目指す 熊本県が予算計上