西武鉄道「他社からの譲受車両」導入へ 条件は「無塗装」「VVVF」大手私鉄では異例



西武鉄道は5月13日、ほかの鉄道会社から鉄道車両を譲り受けて2023年度以降に導入する方針を明らかにした。コロナ禍の厳しい経営環境を受け、コスト削減を図る。大手私鉄が他社で使用した中古の鉄道車両の導入を計画するのは異例。

西武鉄道の列車。【撮影:草町義和】

同社の親会社で西武グループ持株会社の西武ホールディングス(西武HD)は5月12日、2022年度決算の概要を発表。それにあわせて公表した資料で、2023年3月期以降に実施する鉄道事業強化策の一つとして固定費の低減を盛り込んだ。具体的には「ダイヤの見直し、保有車両数の低減」「駅務、運転業務のスマート化」「サステナ車両の導入」を挙げている。

このうち「サステナ車両」は「無塗装車体、VVVFインバーター制御車両等の他社からの譲受車両を当社独自の呼称として定義」と説明。鉄道車両については、車両運用の見直しや買替計画を組み合わせて保有車両数を適正化するとし、さらに「新造車両に限らず、環境負荷の少ない『サステナ車両の導入』を進め、省エネ化、固定費削減を前倒しで実現」するとしている。

西武グループでは西武鉄道・伊豆箱根鉄道・近江鉄道の3社が鉄道事業を行っている。西武鉄道の広報部は鉄道プレスネットの取材に対し「西武HDが今回発表した鉄道事業の強化策は、西武鉄道の施策と認識していただいてかまわない」と話した。

西武HDの資料によると、西武鉄道の保有車両数はコロナ前が1286両で、このうち固定費の削減に効果がある無塗装・VVVF車が47.4%を占めている。2022年度末には車両数の適正化により約60両減らして1227両とし、無塗装・VVVF車両比を56.2%に引き上げる計画。この計画では他社からの「サステナ車両」の譲受を含んでおらず、譲受車が実際に導入されるのは早くとも2023年度以降の見込みだ。

西武鉄道広報部によると、「サステナ車両」の購入先や導入路線など具体的な計画は今後検討を進める。車体が塗装されている車両や、制御方式にVVVFインバーターを採用していない老朽化した車両を中心に、新造車両の導入と他社からの「サステナ車両」の譲受を組み合わせて更新するイメージという。

西武鉄道は新造車両と他社譲受の「サステナ車両」を組み合わせて車両の更新を進める方針。写真は近年増備が続く新造車両の40000系。【撮影:草町義和】

大手私鉄は車両の増備・更新の際、新造車両を導入することがほとんど。ほかの鉄道事業者で使用していた中古車両を導入するのは珍しい。名鉄がオイルショックの影響で利用者が急増したのを受け、1975年から1980年にかけ東京急行電鉄(現在の東急)から中古の車両を購入したことがある。東武鉄道はSL列車「SL大樹」用として真岡鉄道から蒸気機関車C11形325号機を譲り受けたほか、JR各社から14系客車やDE10形ディーゼル機関車などを譲り受けた。

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