ことでん高松市内「幻の高架化」代替策は高架道路の建設か 香川県が中長期案など提示



香川県は10年以上前に事業中止が決まった、ことでん琴平線・長尾線の高松市内の線路を高架化する連続立体交差事業(連立事業)について、都市計画の存廃や代替策を含む検討を進めている。同県は11月、線路をまたぐ高架道路を整備する案などを検討委員会で提示。今後はこの案を軸に検討が進められるとみられる。

高松城の脇を通ることでんの列車。この近くに本町踏切がある。【画像:これこれ/写真AC】

香川県は琴平線・高松築港~片原町間の本町踏切と片原町~瓦町間の福田町第4踏切、瓦町駅の栗林公園寄りにある観光道路踏切の計3カ所について、6月に現状調査を実施。いずれも連立事業で解消されるはずだった踏切だ。1日の自動車交通量は本町踏切が1万1558台、福田町第4踏切が1万9903台、観光道路踏切が2万3095台だった。いずれも20年以上前から減少傾向といい、調査でのコロナ禍の影響は小さいとしている。

朝(7~10時)の平均踏切通過時間は、福田町第4踏切が西側1分48秒・東側2分18分。観光道路踏切は西側1分23秒・東側1分59秒だった。同県は福田町第4踏切の東側で交通渋滞が一時的に発生したが、同踏切の西側と観光道路踏切では重大な交通渋滞は発生していないとした。

一方、本町踏切の平均踏切通過時間は西側で朝5分39秒・夕方(17~20時)3分59秒。東側も朝6分6秒・夕方4分46秒で、ほかの踏切より大幅に長くなった。平均渋滞長も最大で180m(朝の西側)。香川県は「本町踏切自体が自動車交通の阻害要因となり交通渋滞が発生」したとした。

この踏切は道路交差点内に設けられており、踏切・交差点西側の道路はS字に湾曲していることから通りにくくなっている。9月に実施した運輸関係団体への意見聴取でも「本町踏切は渋滞しており、大型車通行時の安全性確保にも問題があるため、対策が必要」「福田町第四踏切、観光道路踏切は、一時的な渋滞はあるが、大きな問題とは考えていない」との意見が寄せられた。

こうしたことから香川県は、本町踏切について対応案を提示。高松市が実施する短期的対応案として横断歩道の集約や歩道の新設、右折レーンの確保、横断歩道の短縮と車道の赤信号短縮を挙げた。また、香川県が実施する中長期的な抜本的対応案として、本町踏切を東西に越える高架道路の整備を挙げた。

本町踏切の短期的対応案。【画像:香川県】
中長期的対応案として示された高架道路のイメージ。【画像:香川県】

検討委は今後、本年度2021年度中にアンケート調査を実施して交通対策の評価を実施。連立事業の実施を前提としている現在の都市計画の存廃の方向性などを決める予定だ。

琴平線・高松築港~瓦町~栗林方面の約2.9kmと長尾線・瓦町~花園方面の約1kmは、線路を高架化して28カ所の踏切を解消する連立事業が計画され、1998年の都市計画決定を経て2000年に事業認可された。しかし香川県・高松市の財政難やことでんの経営悪化を受け、事業は休止。2005年から2009年にかけ、高架区間の短縮や道路の高架化などが比較検討されたが、いずれも一長一短があるとして結論は得られず、2010年に連立事業の中止が決まった。

中止された琴平線・長尾線の連立事業区間(赤)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット編集部】

法手続上、連立事業の都市計画はいまも維持されており、関係機関などからは「駅の最終位置が確定しないので、駅周辺の新たな整備や施設配置が難しい」などの声が上がっている。都市計画決定から20年以上が過ぎて社会情勢も変化していることから、香川県は連立事業の存廃も含め踏切対策を検討することにし、昨年2020年9月に検討委を設置した。

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