長崎本線「上下分離」で廃止届出・許可申請 整備新幹線の「並行在来線」初ケース



上下分離方式のイメージ。佐賀・長崎鉄道管理センターが線路を保有し、JR九州は管理センターから線路を借りて引き続き列車を運行する。【撮影:草町義和、加工:鉄道プレスネット編集部】

JR九州と一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センターは8月31日、長崎本線・肥前山口(江北に改称予定)~諫早間60.8kmの「上下分離方式」への移行に向け、国土交通大臣に対し鉄道事業の廃止届出と許可申請を行った。来年2022年秋頃の移行を目指す。

国土交通省の九州運輸局などによると、JR九州は肥前山口~諫早間の第1種鉄道事業(線路を保有して列車を運行する事業)の廃止を届け出るとともに、同区間の第2種鉄道事業(ほかの鉄道事業者から線路を借りて列車を運行する事業)の許可を申請。佐賀・長崎鉄道管理センターは同区間の第3種鉄道事業(線路を保有してほかの鉄道事業者に貸す事業)の許可を申請した。

JR九州が届け出た第1種鉄道事業廃止の廃止予定日は「九州新幹線(武雄温泉・長崎間)開業日」とされており、2022年秋頃に予定されている九州新幹線長崎ルート・武雄温泉~長崎間(西九州新幹線)の開業と同時に上下分離方式に移行する。

西九州新幹線(赤)の開業に伴い上下分離方式に移行する長崎本線の肥前山口~諫早間(青)。【画像:国土地理院地図、加工:鉄道プレスネット編集部】

肥前山口~諫早間は西九州新幹線の並行在来線とされ、当初はほかの整備新幹線の並行在来線と同様、JR九州から経営分離することが考えられていた。これに沿線自治体が反対したことから、佐賀・長崎の両県が共同で設立した管理センターが線路(下)を保有してJR九州に貸し付け、同社が引き続き列車(上)を運行する上下分離方式を導入することになった。上下分離でJRが引き続き運行するのは、整備新幹線の並行在来線の扱いとしては初のケースになる。

これに伴い、JR九州は管理センターに線路や駅などの施設を無償で譲渡。上下分離後の維持費は佐賀・長崎の両県が負担する。JR九州は上下分離移行後の23年間、管理センターから施設を借りて列車を運行することが決まっている。

西九州新幹線の開業に伴い博多~長崎間を直通する特急列車は通らなくなるが、上下分離後も博多~肥前鹿島間では電車の特急列車が引き続き運行される計画。また、長崎寄りの肥前浜~諫早間は上下分離を機に電化施設を撤去して「非電化化」。普通列車は電車(佐賀寄り)と気動車(長崎寄り)で運転される。

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