「列車に乗ってきたホームドア」日比谷線上野駅で設置作業を公開 使用開始を前倒し



東京地下鉄(東京メトロ)は12月12日未明、上野駅(東京都台東区)の日比谷線ホームでホームドアの設置工事を報道関係者に公開した。使用開始はまだ先だが、東京メトロは当初の予定よりは若干前倒しする方針を明らかにした。

上野駅の日比谷線ホームで公開されたホームドアの設置作業。車内からホームドアの戸袋部が引き出される。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

公開されたのは、上野駅の日比谷線2番線ホーム(北千住方面)の設置工事。1番線ホーム(中目黒方面)のホームドアは、12月5日に設置作業が完了している。

ホームドアの部品類は、前日に東武鉄道伊勢崎線(東武スカイツリーライン)の沿線にある東京メトロの車両基地(千住検車区竹ノ塚分室)で通勤車両の13000系電車に搭載し、南千住駅近くにある車両基地(千住検車区)に移動して待機。12月12日未明に出発し、いったん仲御徒町駅まで走ってから1時14分頃、上野駅の2番線ホームで停車した。

終電後に上野駅の日比谷線2番線ホームに入ってきた13000系。車内にホームドアの戸袋部を載せている。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

ドアが開いてしばらくすると、作業開始。車内からキャスター付きのホームドアの戸袋部(1個あたり約650kg)が、続々と引き出されて設置場所に置かれた。その後、戸袋部を持ち上げやすくする金具を設置。続いて角材がホームの床と戸袋部のあいだに敷かれ、手早くキャスターが取り外された。

ホームドアの戸袋部が設置場所に置かれる。【撮影:鉄道プレスネット編集部】
ホームドア戸袋部の設置作業。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

そして数人がかりで戸袋部を持ち上げながら角材をどかし、戸袋部をゆっくりと下ろしてホームの床に接地。即座に金具の取り外しと固定作業が行われた。作業開始から設置完了まで1時間半ほど。設置完了後、ホームドアの戸袋部を運んできた電車が発車し、続いて線路側で建築限界(車両とぶつからない位置)の測定などが行われた。

■「開いたまま」期間の安全確保が課題に

東京メトロによると、既設の駅にホームドアを整備する場合の平均的な作業期間は約22カ月。まずホーム下のケーブルなどホームドアの設置で支障するものを処理するなどの工事で約3カ月かかる。続いてホームの補強に約12カ月、ホームドアを設置するための穴をホーム床にあけるなどの準備作業が約4カ月かかる。

ホームドアの戸袋部がホームの床に固定された。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

こうしてホームドアを設置できるようになり、設置自体は数時間ほどで完了するが、その後も配線工事や調整、試験に約3カ月かかり、これでようやくホームドアを使えるようになる。このためホームドアの設置からしばらくは、ホームドアはあってもドアが開いたままの「開固定期間」になる。

既設の駅にホームドアを設置するのに時間がかかるのは、昼間の営業時間中に工事を行うことができないため。深夜~未明のわずかな時間を使い、少しずつ工事を進めていくしかない。東京メトロをはじめとした鉄道事業者は来年2021年春に終電の繰り上げを計画しているが、これは深夜~未明の夜間作業時間帯を拡大するのがおもな目的。ホームドア設置工事でも、夜間作業時間帯の拡大で工期短縮などの効果が見込まれるという。

ホームドアの設置では「開固定期間」の安全対策強化も課題として浮上している。11月に東西線の東陽町駅で、視覚障害者がホームから転落して電車にはねられる人身事故が発生。同駅はちょうどホームドアの「開固定期間」に入っており、ホームドアは開いたままだった。

ホームドアが開いたままの状態で上野駅を去る列車。【撮影:鉄道プレスネット編集部】

東京メトロは「開固定期間」の安全対策として警備員の増員などを行うとしているが、「開固定期間」の短縮も図る。日比谷線上野駅のホームドアは当初、来年2021年3月下旬の使用開始を予定していたが、若干早まる見込み。東陽町駅のホームドアも2月下旬の使用開始を予定していたが、1月末に前倒しするという。