リニア中央新幹線の工事費「2倍」に 開業時期も「見通せない状況」



JR東海は10月29日、工事中のリニア中央新幹線・品川~名古屋について、総工事費が現在の計画より4兆円増の11兆円になるとする見通しを示した。当初計画の2倍に膨れあがる。

リニア中央新幹線に組み入れられる山梨リニア実験線。【画像:matsuemon/写真AC】

JR東海は2014年に品川~名古屋の工事実施計画認可を受け着工。当初は2027年の開業を予定し、総工事費は2018年時点で5兆5200億円としていた。しかし難工事への対応や地震対策の充実、残土処分先の確保などのため工事費が膨張。2023年12月には総工事費を7兆400億円として工事実施計画の変更認可を受けていた。

JR東海によると、その後さらに工事を進めるなかで、近年の物価高騰や難工事対策などの「増額要素」が判明。改めて精査したところ、品川~名古屋の総工事費がさらに4兆円近く増えて11兆円になったという。

精査の概要によると、増加分の内訳は「物価等高騰の影響」が2兆3000億円と最も多く、これに「難工事への対応」(1兆2000億円)と「仕様の深度化」(4000億円)が続く。

物価については2021年以降、鋼材やコンクリートなど建設資材の価格や各種設備を構成する銅やアルミなどの材料価格、残土の受け入れに関する費用などのほか、人件費が高騰している状況も踏まえて1兆3000億円増加するとした。これに将来の物価高騰リスクに備えた費用として1兆円を追加した。

難工事への対応は、山岳トンネルを整備する部分の地質の状況に応じた対策の増加などを挙げている。これまで掘削した区間では当初の想定よりもろい地山が出現したことから、強固な構造物を作るための対策を追加した。この対策でトンネルの掘削断面積が大きくなり、残土処理費も増加。今後の掘削区間でも同様の対応が必要になると見込んだ。ほかにも高架橋・橋梁の構造変更や名古屋駅の安全対策強化、品川駅の地震対策による構造変更なども踏まえて工事費を見直した。

地質がもろい場所での山岳トンネルの対策追加イメージ(右)。【画像:JR東海】

仕様の深度化は、シールド工法で建設するトンネルの構造の見直しを挙げている。超電導磁気浮上式鉄道として計画されているリニア中央新幹線の場合、2本のレールを敷設する一般的な鉄道(普通鉄道)にはないガイドウェイ側壁が設けられる。これを支える下部構造物について、高架橋・橋梁の地震時の設計で得られた知見を踏まえて設計を見直した結果、コンクリートや鉄筋などの数量が増加したという。

シールドトンネル内の下部構造とガイドウェイ側壁のイメージ。【画像:JR東海】

今後の経営状況については、品川~名古屋開業の翌年度の営業収益を1兆6400億円、経常収益を650億円とし、長期債務残高は7兆1000億円を見込んでいる。

開業時期を2035年と仮定した場合の経常利益と長期債務残高の予測。【画像:JR東海】

開業時期は当初2027年の開業を予定していたが、工事の難航などで同年中の開業は困難な状況。現在は工事実施計画のうえでは2027年以降の開業予定としているが、実際は早くても2030年代半ばの開業になりそうな情勢だ。

JR東海は今回の工事費の精査に際し、2035年に開業すると仮定した。ただし同社は「(2035年は)開業時期の見通しを示したものではなく、試算のために便宜上仮置きしたもの」と説明。開業時期については「静岡工区のトンネル掘削工事に未だ着手の見込みが立たないため、現時点で見通すことができない状況」としている。

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