フラワー長井線を運営する山形鉄道は京三製作所に信号保安設備更新工事を発注した。従来の信号システムを次世代信号システムの「無線式列車制御システム」に更新する。山形鉄道と京三製作所が2月21日、発表した。

京三製作所が山形鉄道に納入する無線式列車制御システムは「統合型列車制御システム」(UTCS)と呼ばれるもの。人工衛星測位システム(GNSS)を活用し、信号保安設備の機能を中央制御装置と車上装置に集約する。各装置間の通信には公衆無線回線の携帯電話回線を利用する。
列車が走行する際、全区間で連続的な速度制御を実施し、既設の信号保安設備と同等以上の安全性を確保する。列車の走行位置は携帯電話回線を通して中央制御装置で把握できる。
山形鉄道と京三製作所によると、このシステムはシステム構成がシンプルで、信号機などの地上設備を大幅に削減。携帯電話回線の利用で通信ケーブルも不要になり、メンテナンス作業の負担を軽減するという。

山形鉄道と京三製作所は2024年度から3カ年計画で工事を進め、実証実験を行ったのち2027年度の運用開始を目指す考えだ。
フラワー長井線は山形新幹線・奥羽本線(山形線)の赤湯駅から米坂線の今泉駅を経て荒砥駅に至る30.5kmの鉄道路線。1913年から1923年にかけて国鉄長井線として開業した。1986年には国鉄再建法に基づき廃止対象(第3次特定地方交通線)に指定。JR東日本への暫定継承を経て1988年に第三セクターの山形鉄道が経営を引き継いだ。
コロナ禍が本格化する前の輸送密度は500人程度と少なく、厳しい経営が続いている。2016年には鉄道事業再構築実施計画が認定され、実質的に上下分離方式の経営に移行。昨年2024年にも実施計画の認定を受け、次世代信号システムの導入を新たに盛り込んでいた。
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