国土交通省は8月2日、全国の都市鉄道を対象に実施している混雑率調査の昨年度2023年度の結果を公表した。2020年度はコロナ禍で大幅に改善されたが、その後は悪化が続いており、三大都市圏では前年度2022年度に比べ5~13ポイント悪化した。
2023年度の混雑率調査では、全国都市部のJR線・大手私鉄・公営地下鉄・路面電車・モノレール・新交通システムを中心に、おもに2023年10~11月の1日または複数日の乗車人員データを基に計算した。
三大都市圏の平均混雑率は東京圏が136%で、2022年度(123%)に比べ13ポイント悪化。大阪圏は6ポイント悪化の115%、名古屋圏は5ポイント悪化の123%だった。一方、コロナ禍前(2019年度)との比較では東京圏(163%)で27ポイント差まで迫った。大阪圏は11ポイント差で、名古屋圏も9ポイント差まで迫っている。
混雑率のワースト1位は都営の新交通システム「日暮里・舎人ライナー」の赤土小学校前→西日暮里(171%)で4年連続。2022年度(155%)に比べ16ポイント悪化し、2019年度(189%)との差は18ポイントに縮小した。これに広島電鉄宮島線・東高須→広電西広島(164%)、東京メトロ日比谷線・三ノ輪→入谷(162%)、JR埼京線・板橋→池袋(160%)、JR中央線快速・中野→新宿(158%)が続いた。
コロナ禍前の2019年度と2023年度と比較した場合、混雑率が2019年度の数値まで戻っていないのは調査対象の237区間のうち184区間。2019年度の混雑率より50ポイント以上の差がある区間は東京圏の9区間で、このうち1区間を除きコロナ禍前の混雑率が160%以上だった。
コロナ禍前は混雑率がワースト1位の「常連」だった東京メトロ東西線・木場→門前仲町の場合、2019年度が199%だったのに対し、2023年度は148%で51ポイントの差がある。2019年度の混雑率が195%だったJR横須賀線・武蔵小杉→西大井も、2023年度はそれより61ポイント差の134%だった。
2019年度とは最混雑区間や最混雑時間帯が変わっていたり、減便・減車や増発・増結で輸送力が変化していたりするケースもあるため一概には言えないが、もともと混雑率が非常に高かった区間ではラッシュ時の利用者数の回復が鈍く、テレワークの普及の影響がとくに強く出ているとみられる。
混雑率ワースト1~20位(2023年度)
1位:都営日暮里・舎人ライナー(赤土小学校前→西日暮里):171%
2位:広島電鉄宮島線(東高須→広電西広島):164%
3位:東京メトロ日比谷線(三ノ輪→入谷):162%
4位:JR埼京線(板橋→池袋):160%
5位:JR中央線快速(中野→新宿):158%
5位:西鉄貝塚線(名島→貝塚)(:158%
7位:首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線(青井→北千住):154%
8位:JR武蔵野線(東浦和→南浦和):152%
8位:都営大江戸線(中井→東中野):152%
10位:JR東海道線(川崎→品川):151%
11位:東京メトロ千代田線(町屋→西日暮里):150%
11位:JR京浜東北線(川口→赤羽):150%
13位:京成押上線(京成曳舟→押上):149%
14位:東京メトロ東西線(木場→門前仲町):148%
14位:JR総武線快速(新小岩→錦糸町):148%
14位:東京メトロ有楽町線(東池袋→護国寺):148%
17位:JR京浜東北線(大井町→品川):146%
17位:JR南武線(武蔵中原→武蔵小杉):146%
17位:東京メトロ南北線(駒込→本駒込):146%
20位:阪急神戸線(神崎川→十三):143%
20位:千葉モノレール(千葉公園→千葉):143%
《続報記事》
・鉄道の混雑率「時代に即した表現」に 国交省の解説「新聞」「週刊誌」が消滅(2024年8月2日)
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