鹿児島市電を鹿児島港の本港区に延伸する構想について、鹿児島市は7月31日、本港区エリアに計画されている新総合体育館へのアクセス需要だけでは採算が取れないとの見方を示した。

本港区エリアには桜島や奄美、種子島、屋久島などを結ぶフェリーが発着するターミナルがあるほか、2005年には商業施設「ドルフィンポート」がオープン。鹿児島市は2次交通の強化や市内中心部の回遊性向上などを図るため、2011年度から本港区への市電の延伸を検討している。2020年3月には延伸ルートとして4案を設定した。
4案はいずれも一方通行で単線軌道の敷設を想定。鹿児島中央駅から本港区エリアを経由して鹿児島中央駅に戻るルートになる。
一方でドルフィンポートは2020年3月に閉鎖。跡地には鹿児島県が新しい総合体育館を整備する計画を立てており、2029年にはオープンする予定だ。市電延伸の検討ではドルフィンポートの年間利用者数を約190万人と想定していたが、新総合体育館の年間利用者数はその5分の1ほどになる約40万人の見込み。鹿児島市は現在の新総合体育館の利用者数だけでみると「(市電の延伸は)非常に厳しい」と述べた。
ほかに新しいサッカースタジアムの候補地として本港区エリアの北埠頭が挙がっていたが、北埠頭を所有する鹿児島県は港湾計画の見直しや港湾事業者との調整に時間がかかるとして難色を示し、鹿児島市は今年2024年2月に北埠頭への整備を断念。本港区エリアの再開発は迷走状態に陥っている。
鹿児島市によると、鹿児島県が本港区エリアの再開発計画を検討中といい、「全体的な利用者数が見えてこないと調査自体も難しいのではないか」と述べ、市電延伸の可否は再開発計画に左右されるとの考えを示唆した。
検討中の延伸4案(軌道の既設区間も含む運行ルート)

●A’-Eルート(赤)
鹿児島中央駅→ナポリ通線→パース通線→本港区エリア→高野山線→水族館口交差点→(鹿児島駅)→鹿児島中央駅
●A-Eルート(ピンク)
鹿児島中央駅→高見馬場交差点→新屋敷交差点→パース通線→本港区エリア→高野山線→水族館口交差点→(鹿児島駅)→鹿児島中央駅
●B-Eルート(緑)
鹿児島中央駅→いづろ交差点→中央通線→本港区エリア→高野山線→水族館口交差点→(鹿児島駅)→鹿児島中央駅
●E-Bルート(薄緑)
鹿児島中央駅→(鹿児島駅)→水族館口交差点→高野山線→本港区エリア→中央通線→いづろ交差点→鹿児島中央駅
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