JR普通列車だけじゃない「青春18きっぷ」で乗れる列車・路線(2024年最新版)



春・夏・冬の指定期間に限りJR線の普通列車が乗り放題の企画切符「青春18きっぷ」。夏季用の発売が7月10日から始まった。発売額は1万2050円で1日(1回)あたりでは2410円。JR本州3社の幹線運賃と比較した場合、141km以上の区間を片道利用、または71km以上の区間を往復利用すると「青春18きっぷ」のほうがお得になる。

JR可部線の普通列車。「青春18きっぷ」で利用できる。【撮影:草町義和】

今年2024年の夏季用と冬季用は発売計画がなかなか発表されず、一部では「このまま発売終了するのでは?」とささやかれていた。しかし6月に入って夏季用のみ発売計画がようやく発表。発売開始日が例年より遅くなったものの、利用できる期間は従来通り7月20日~9月10日で、発売額や切符の効力も春季用からの変更はなかった。

ただし、北陸新幹線・金沢~敦賀の延伸開業などを中心としたダイヤ改正が3月に実施され、特例で利用できる列車や路線の内容などが大きく変わった。本サイトは昨年2023年7月に「青春18きっぷ」で利用できる列車や路線を解説する記事を配信したが、2024年夏季用向けの最新版として「利用できる列車・路線」を改めて解説する。

利用できるのは「原則三つ」

「青春18きっぷ」で利用できるのは、原則として次の三つだ。

(1)JR線の普通列車の普通車自由席
(2)JRのバス高速輸送システム(BRT)
(3)JR西日本宮島フェリー

(1)は一般に知られている通りだが、JRでは快速列車も営業上は「普通列車の仲間」としているから「青春18きっぷ」で乗車できる。「新快速」や「特別快速」を名乗る快速列車も同じだ。

快速列車も「青春18きっぷ」で利用できる。写真は東海道本線(JR京都線)を走る新快速。【撮影:草町義和】

ただし、利用できる座席は普通車自由席のみ。それ以外の座席は「青春18きっぷ」だけでは乗れないか、そもそも利用できない。

普通車指定席は、指定席券を追加で購入する必要がある。グリーン車自由席も同様で普通列車用の自由席グリーン券を追加購入すれば利用できる。「ホームライナー」などと呼ばれている座席指定・定員制の快速・普通列車も、指定席券や整理券を追加購入すれば利用可能だ。

一方、グリーン車指定席はグリーン券を追加購入しても乗れない。

磐越西線(福島県・新潟県)のSL列車「SLばんえつ物語」は「青春18きっぷ」で利用できる快速列車の扱いだが、普通車自由席はない。7両編成のうち1号車と4号車を除く5両に座席が設けられており、このうち2・3・5・6号車の4両は普通車指定席だから、指定席券を追加購入すれば「青春18きっぷ」で乗れる。一方、7号車はグリーン車指定席のため、グリーン券を追加購入しても利用できない。

「SLばんえつ物語」は全車指定席。普通車は指定席券を追加購入すれば「青春18きっぷ」で乗れるがグリーン車はグリーン券を購入しても乗れない。【撮影:草町義和】

特急列車と急行列車は座席の種別にかかわらず、特急券などを追加購入しても「青春18きっぷ」では利用できない。すべての列車が特急の新幹線も同様だ。山陽新幹線の車庫回送線を活用した通勤路線の博多南線・博多~博多南(福岡県)は営業上は在来線扱いだが、列車はすべて特急のため「青春18きっぷ」では利用できない。

新型車両の273系が導入された伯備線の特急「やくも」。「青春18きっぷ」では特急券を追加購入しても乗れない。【撮影:草町義和】

代行バスは利用できる?

(2)のBRTとは、線路敷地を再整備したバス専用道を走るなどして高速輸送を行うバスのこと。「青春18きっぷ」では、JR東日本の気仙沼線BRT(宮城県)と大船渡線BRT(宮城県・岩手県)、JR九州の日田彦山線BRT(BRTひこぼしライン、福岡県・大分県)を利用できる。

JRが運行するBRTは「青春18きっぷ」で乗れる。写真は気仙沼線BRT。【撮影:草町義和】

ちなみに、災害などで運休しているJR線の代行バスも基本的には普通列車扱いで運行されており、「青春18きっぷ」で乗車可能だ。その一方、代行バス以外のJRバスは「青春18きっぷ」では利用できない。

(3)は宮島口フェリー乗り場(山陽本線の宮島口駅から徒歩約6分)と宮島(厳島)を結ぶJRのフェリーで、これも「青春18きっぷ」で利用できる。ただし宮島への入島時に宮島訪問税(100円)を追加で払う必要がある。

JR西日本宮島フェリーが運航する宮島口~宮島のフェリー。【画像:丸岡ジョー/写真AC】

宮島口~宮島を結ぶ船は、ほかにも広島電鉄系の宮島松大汽船が運航しているが、こちらは「青春18きっぷ」では利用不可。JR九州高速船が運航する福岡~韓国(釜山)航路も利用できない。

私鉄などは利用不可

「青春18きっぷ」はJR線の企画切符だから、JR以外の私鉄や地下鉄、第三セクター鉄道などは原則として利用することができない。かつては国鉄・JRが運営していたが現在は第三セクターなどに移管された路線も同様に利用できない。ただし、JR線に乗り入れている私鉄などの普通列車は、JR線内であれば「青春18きっぷ」で利用できる。

JR中央線の三鷹駅から東京メトロ東西線に乗り入れて西船橋駅に向かう普通列車。JR線内の三鷹~中野は車両が東京メトロのものでも「青春18きっぷ」で利用できる。【撮影:草町義和】

注意したいのは、JR線に乗り入れているように見えて、営業上は「並行する別事業者・別路線の扱い」になっている場合だ。利用できるケースと利用できないケースがある。

井原鉄道が運営する井原線(岡山県・広島県)の場合、総社~清音~神辺のうち岡山県側の総社~清音はJR伯備線の線路を走る。しかし、法手続上は井原鉄道がJR西日本から伯備線の線路を借りて列車を運行しており、営業上も別路線の扱い。このため、総社~清音では「青春18きっぷ」で井原鉄道の列車に乗ることはできない。

その一方、井原線の列車の一部は広島県寄りの神辺~福山でJR福塩線に乗り入れているが、こちらは通常の乗り入れの扱い。この区間では井原鉄道の車両で運行される普通列車も「青春18きっぷ」で利用できる。

総社駅で発車を待つ井原鉄道の列車。総社~清音はJR伯備線の線路を借りて走るが「青春18きっぷ」では利用できない。【画像:忍者くん/写真AC】

JR七尾線の七尾~和倉温泉(石川県)も法手続上は総社~清音と同じで、のと鉄道がJR西日本から線路を借り入れて普通列車を運行。JR西日本はこの区間では特急列車しか運行しておらず、本来なら「青春18きっぷ」は利用できないはずだ。ただし、のと鉄道の普通列車は七尾~和倉温泉に限り「青春18きっぷ」でも特例的に利用できる。

JR西日本と南海電鉄が線路を共同使用しているJR関西空港線・南海空港線のりんくうタウン~関西空港も営業上は別路線の扱いだが、りんくうタウン発→関西空港行きの列車はJRの切符で南海の列車に乗ったり、南海の切符でJRの列車に乗ったりできる特例がある。ただし「青春18きっぷ」は特例の対象外のため、この区間で南海の列車に乗ることはできない。

特急利用の特例が変更

「青春18きっぷ」は原則として普通列車の普通車自由席のみ利用でき、特急列車や急行列車などは利用できない。ただし特急列車しか運行されていない線区や普通列車が少ない線区を中心に、「青春18きっぷ」だけで特急列車や急行列車などを利用できる特例が設けられている。

2024年3月のダイヤ改正では特例の内容が変更され、JR北海道で特例区間が増えたほか、特急列車の全車指定席化に伴い利用できる座席が普通車指定席の空席に変更された。特例の区間と内容は次の通り。

●石勝線:新得~新夕張
この区間内の相互発着の場合に限り、特急・急行列車の普通車指定席の空席を利用できる。

●室蘭本線:東室蘭~室蘭
この区間内の相互発着の場合に限り、特急・急行列車の普通車指定席の空席を利用できる。

●奥羽本線:新青森~青森
この区間内の相互発着の場合に限り、特急・急行列車の普通車自由席を利用できる。

●佐世保線:早岐~佐世保
特急列車の普通車自由席を利用できる。

●宮崎空港線:宮崎~宮崎空港
特急列車の普通車自由席を利用できる。

特例区間内にある石勝線のトマム駅。ここから新得駅や新夕張駅まで「青春18きっぷ」で特急に乗ることができる。【画像:makoto.h/写真AC】

石勝線・室蘭本線・奥羽本線の特例はあくまで「区間内の相互発着」に限られることに注意が必要だ。たとえば石勝線の場合、特例区間内のトマム駅で乗車して新夕張駅で下車するなら「青春18きっぷ」だけで利用できる。しかし特例区間外の札幌駅から特急に乗り続けて新得駅で下車する場合は乗車する全区間、つまり札幌→新得の乗車券と特急券が必要になる。札幌→新夕張のみ乗車券と特急券を購入し、特例区間内の新夕張→新得は「青春18きっぷ」を利用するということはできない。

一方、佐世保線と宮崎空港線の特例はそうした制限がない。延岡駅から特急に乗り続けて終点の宮崎空港駅で下車する場合、延岡→宮崎は乗車券と特急券が必要だが、宮崎→宮崎空港は普通車自由席なら「青春18きっぷ」で利用できる。

三セク鉄道の特例利用も変更

第三セクター鉄道についても、整備新幹線の並行在来線としてJRから経営分離された路線の一部は通過利用できる特例が設けられている。

2024年3月には北陸新幹線・金沢~敦賀の延伸開業に伴い、並行する北陸本線の同区間が第三セクターのIRいしかわ鉄道とハピラインに引き継がれたことから、北陸エリアの特例区間が大幅に変更された。特例区間と途中下車できる駅は次の通り。

●青い森鉄道線:八戸~青森
※八戸・野辺地・青森の3駅のみ途中下車可能

●あいの風とやま鉄道線・IRいしかわ鉄道線:富山~津幡
※富山・高岡・津幡の3駅のみ途中下車可能

●ハピラインふくい線(旧・北陸本線):越前花堂~敦賀
※越前花堂・敦賀の2駅のみ途中下車可能

青い森鉄道線は八戸~青森を通過利用する場合に限り利用できる。【画像:からのち/写真AC】

これらの特例区間で利用できる列車は普通列車の普通車自由席。特急列車や急行列車は利用できない。あいの風とやま鉄道線の「あいの風ライナー」はライナー券(指定席券)を追加購入すれば利用できる。

この特例で注意したいのは「JR線へ通過利用する場合」に限られること。青森駅から青い森鉄道線と野辺地駅を経由してJR大湊線の大湊駅に向かうなら、青い森鉄道線の運賃は不要だ。一方、青森駅から青い森鉄道線の列車に乗って同線の浅虫温泉駅で途中下車し、その後JR大湊線の大湊駅へ向かう場合は青森→浅虫温泉と浅虫温泉→野辺地で青い森鉄道線の運賃が必要になる。

青函トンネルはオプション券で

津軽海峡をくぐる青函トンネルの区間は普通列車が現在設定されていないが、その代わり「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」(2490円)が2016年から発売されている。「青春18きっぷ」と併用することが条件のオプション券で、奥津軽いまべつ~木古内~五稜郭を乗車日当日に限り片道1回だけ利用できる。

利用できる列車と座席は、奥津軽いまべつ~木古内が北海道新幹線の列車で普通車の空いている席、木古内~五稜郭は第三セクター鉄道(道南いさりび鉄道線)の普通列車になる。道南いさりび鉄道線内の途中駅で下車することはできない。

青函トンネルを走る北海道新幹線の列車。オプション券を買えば奥津軽いまべつ~木古内で乗車できる。【画像:スペンサー/写真AC】
オプション券で利用できる道南いさりび鉄道線の普通列車。【画像:まこりげ/写真AC】

奥津軽いまべつ駅はJR津軽線の津軽二股駅がすぐそばにあり、五稜郭駅ではJR函館本線に接続している。津軽二股・五稜郭の両駅とも「青春18きっぷ」で乗れる普通列車でアクセスすることが可能。本州~北海道を移動できる。

ただし、津軽線の津軽二股駅を含む蟹田~三厩の区間は2022年の水害で運休しており、現在は代行バスなどが運行されている。利用者が少ない割に復旧費が多額になることから、JR東日本と沿線自治体は鉄道を廃止する方向で協議中。廃止が決まった場合、オプション券の取り扱いも変化する可能性がありそうだ。

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