臨海地下鉄「高速道路跡の遊歩道」接続 東京都中央区、駅出入口など考えまとめる



東京都中央区は都心部・臨海地域地下鉄構想(臨海地下鉄)について、2023年度の検討調査結果を明らかにした。駅周辺の歩行者ネットワークや駅の構造について、同区としての考えを取りまとめた。

地下鉄のトンネル工事のイメージ(東京メトロ副都心線、開業前の2006年)。【撮影:草町義和】

検討対象は中央区内に設けられることが想定されている東京・新銀座・新築地・勝どき・晴海の5駅(いずれも仮称)。江東区内の豊洲市場駅(仮称)と有明・東京ビッグサイト駅(仮称)は対象外だ。臨海地下鉄のルートや駅の位置は、東京都が2022年11月に公表した事業計画案を踏まえた。「駅とまちとの連携基本コンセプト」を各駅ごとに設定。これに基づき回遊性の高い歩行者ネットワークになるよう、駅の出入口や地下通路のおおまかな位置を取りまとめた。

東京駅は既存の駅や地下通路との接続に加え、日本橋川北側へ回遊できる地下ネットワーク動線を確保。日本橋川沿いの景観を楽しめるよう地上へスムーズにアクセスできる駅構造を目指す。

新銀座駅も既存地下鉄駅との接続に加え、銀座の街を楽しめるよう地上にスムーズにアクセスできる駅構造を目指す。また、東京都が構想している「Tokyo Sky Corridor」へのアクセス動線の確保を目指す。

Tokyo Sky Corridorは東京高速道路(KK線)の廃止(2030年以降)により創出されるKK線の構造物の上部空間。東京都は遊歩道など回遊性を高めた歩行者空間を再整備する方向で検討を進めている。

新築地駅は築地市場跡地開発との連携を盛り込んだほか、築地エリアや築地場外市場の回遊性が向上するよう地上やデッキへスムーズにアクセスできる駅構造を目指す。交通結節性の高い歩行者ネットワークである築地川アメニティ整備構想へのアクセス動線の確保も目指す。

勝どき駅は都営大江戸線と接続する地下ネットワーク動線の確保に加え、新島橋方面への地下ネットワーク動線の確保も目指す。晴海駅は地上へアクセス後、デッキレベルのネットワークへスムーズにアクセスできる駅構造を採用。晴海5丁目方面への地下ネットワーク動線の確保を目指す。ほかにも東京・新銀座・勝どき・晴海の各駅では周辺の開発計画との連携を図る考えだ。

各駅のまちとの連携基本コンセプト。【画像:中央区】

駅出入口や地下通路の概略位置は、連携基本コンセプトや既存駅・地下通路の歩行者動線を考慮。新設出入口の検討は「民間敷地との調整前段階」として道路や公園などの公共施設内のみで検討した。各駅の出入口・地下通路接続の概略位置は次の通り。

●東京駅
・外堀通りへの出入口(北)
・半蔵門線三越前駅との接続
・永代通り地下通路との接続
・外堀通りへの出入口(南)
・八重洲地下街との接続

●新銀座駅
・KK線との接続
・外堀通りへの出入口
・有楽町線銀座一丁目駅との接続
・丸ノ内線銀座駅との接続

●新築地駅
・都営大江戸線築地市場駅との接続
・晴海通りへの出入口
・場外市場側へつながる出入口・駅前広場
・デッキレベルの回遊動線との接続

●勝どき駅
・晴海通りへの出入口
・都営大江戸線勝どき駅との接続
・月島第2児童公園への出入口
・新島橋方面への出入口

●晴海駅
・晴海3丁目交差点への出入口
・晴海3丁目交差点を回遊するデッキとの連携
・補助314号線への出入口
・晴海4丁目側への出入口
・晴海5丁目側への出入口

各駅の出入口や接続する地下通路の想定。【画像:中央区】

一方、中央区は検討により見えてきたという課題も挙げた。駅周辺の道路空間だけではバリアフリーの動線を確保するのが難しいことも多いとし、周辺の開発などと連携する必要性を指摘。道路幅が狭く周辺に開発計画もないエリアでは、出入口設置の手法を検討する必要があるとした。

また、既存の構造物との接続に際しては詳細な構造検討が必要であることや、実際の歩行者の交通動向や需要に見合う出入口の位置などを確認する必要があることも指摘した。

中央区は今回検討した内容や地域の意見も含め、運行事業者や東京都などと調整を図る方針。既設の駅・地下空間の施設管理者や駅周辺の開発事業者との調整、駅周辺のまちづくりと連携した歩行者ネットワークの検討の深度化も図る考えだ。

臨海地下鉄は東京都心部と臨海副都心を結ぶ約6kmの地下鉄構想路線。終点の有明・東京ビッグサイト駅は、東京臨海高速鉄道が運営するりんかい線の国際展示場駅や、新交通ゆりかもめの有明駅の近くに設けられる想定だ。

今年2024年2月、東京都、鉄道・運輸機構、東京臨海高速鉄道の3者は共同で事業化に向けた事業計画の検討を行うことで合意したと発表した。東京都は鉄道・運輸機構を整備主体、東京臨海高速鉄道を営業主体にすることを想定。2040年ごろの開業を目指している。

《関連記事》
東京都の臨海地下鉄「りんかい線の第三セクター」参画へ 羽田空港乗り入れを視野
東京都の臨海地下鉄「羽田空港接続」も検討へ 事業計画案を公表、6km・7駅を整備