JR東海は12月12日、「架線三次元検測装置」「電車線金具異常検知装置」を開発したと発表した。営業列車用の車両に搭載し、旅客を乗せて走りながら架線の状態を自動的にチェックする。検査の高頻度化や将来の労働力不足を見据えた省力化を目指す。

架線三次元検測装置は車体屋根上のパンタグラフのカバーがある部分に設置。架線をラインセンサーカメラで撮影するほか、測域センサーから照射されるレーザーで架線同士の位置を追跡する。これにより架線が交差する部分など架線の複雑な位置関係をチェックし、状態の良否を自動的に判定する。

電車線金具異常検知装置も車体の屋根上に設置。近赤外線照明とラインセンサーカメラで構成される。ラインセンサーカメラで電車線の金具を撮影し、金具の変形や破損などの異常をAIで自動的に検出する。

これらの装置は300km/hの高速走行時でも使用可能。取得したデータは今後整備する「ミリ波方式列車無線」で地上の施設に伝送する。これにより架線の状態の変化を早期に発見し、タイムリーな保守作業が可能になるという。
東海道新幹線では現在、業務用車両の電気軌道総合試験車923形「ドクターイエロー」を走らせて架線を検査しているほか、保守作業員による徒歩巡回などでも架線の外観検査を実施している。JR東海によると、今回開発した装置を使えば、徒歩巡回などによる外観検査や夜間の測定作業の削減につながるという。
JR東海は今後、各装置の長期耐久性など営業列車への搭載に向けた検証に加え精度の向上を図る方針。ミリ波方式列車無線は2027年の運用開始を予定しており、同社はこれ以降に各装置の活用を見込んでいるとしている。

東海道新幹線は昨年2022年12月、架線をつるす金具の損傷で架線で断線し、列車の運行を約4時間見合わせるというトラブルが発生。今年2023年7月にも架線の金具の脱落で停電などのトラブルが発生した。
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