東急電鉄「1年以上先」の値上げ申請 改定率12.9%、一部路線や通学定期は据置き



東急電鉄は1月7日、鉄軌道旅客運賃の変更認可を国土交通大臣に申請した。改定率は12.9%で、増収率は11.7%。認可された場合、同社は1年以上先の2023年3月に運賃値上げを実施する。

東急東横線の列車。【撮影:草町義和】

普通運賃の上限は、東横線・目黒線・田園都市線・大井町線・池上線・東急多摩川線の鉄道線で初乗り運賃が140円。10~14円値上げされ、1円単位運賃(ICカード)と10円単位運賃(紙の切符)のどちらも同額になる。それ以外の区間は改定率と同程度の値上げで、渋谷~横浜間はIC309円(37円値上げ)、切符310円(30円値上げ)になる。

こどもの国線は運賃を据え置く。軌道線の世田谷線はIC・切符とも160円とし、ICカードは13円、切符は10円の値上げになる。

通勤定期運賃の上限(大人1カ月)は、鉄道線(こどもの国線除く)で1~3kmが610円値上げの4990円、51~56kmが2410円値上げの1万9900円。世田谷線は750円値上げの6140円になる。割引率は現在の37.8%と同じで、3・6・12カ月の計算方法は変更しない。こどもの国線は現在の金額を据え置く。

通学定期運賃の上限は、すべての路線で据え置く。これにより割引率は現行の73.9%より3.2%上昇して77.1%になる。

おもな区間の現行運賃と申請運賃。【画像:東急電鉄】

東急線の運賃値上げが申請されたのは、消費税率の変更によるものを除くと17年ぶり。

東急電鉄によると、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの定着で、とくに定期利用者が同業他社と比べても大きく減少。今後もコロナ前の需要水準には戻らないと想定し、経営状況が厳しくなっている。

一方でホームドアや車内防犯カメラ、踏切障害物検知装置を完備するなど、業界水準を大きく上回る規模の設備投資を実施。今後も高水準な鉄道インフラを維持するため、運賃変更認可を申請したという。

ただし通学定期については、家庭負担に配慮するとして据え置きに。ほかに「お客さまの負担増に配慮し、子育て世代やシニア層に向けた施策などもあわせて検討していきます」としている。ファミリー向けの休日フリー切符や、昨年2021年秋に発売された高齢者向け乗り放題切符の設定なども検討されるとみられる。

運賃変更認可の申請は通常、実施時期の数カ月前に行われることが多く、申請時期から実施時期まで1年以上の期間を取るのは珍しいとみられる。東急電鉄の広報CS課は「お客さまへの周知を図る期間が必要と考えた。(ICカードの)PASMOのシステムチェックによる時間も必要だ」と話した。上限運賃の認可後に届け出る実施運賃は、上限運賃と同額にする方針としている。

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