阪急高架橋と姫路モノレールが「土木遺産」認定 「優美な曲線」「失敗インフラ」



土木学会は9月28日、2020年度の選奨土木遺産を決めた。鉄道関係では、兵庫県内の「阪急電鉄神戸市内線高架橋」「姫路市営モノレール遺構群」が選奨土木遺産として認定された。

手柄山駅の跡地に整備された施設で保存、展示されている姫路モノレールの車両。【撮影:草町義和】

「阪急電鉄神戸市内線高架橋」として認定されたのは、阪急神戸本線・王子公園~神戸三宮間の高架橋。阪急電鉄の土木構造物としては「阪急大宮駅と大宮・西院間の地下線路」に続く2件目の認定となった。

今回認定された高架橋は1936年、現在の阪急神戸本線が神戸三宮駅に乗り入れた際に建造された、鉄筋コンクリート造りの高架橋。日本初の鉄筋コンクリート造り高架橋の東京~万世橋間高架橋を設計した、建築家の阿部美樹志が手掛けた。

「阪急電鉄神戸市内線高架橋」のうち鉄筋コンクリート充腹アーチ橋の原田拱橋。【画像:阪急電鉄】

阪急電鉄によると、3カ所のアーチ橋部分は、幹線道路との交差部で優美な景観とするべく採用されたが、道路と斜めに交差しているため、ねじれて見えるのが特徴。迫石(せりいし)を模した装飾を施すなど、細部に行き届いた配慮を施している。

それ以外のラーメン構造の高架橋も、高架下の利用に配慮しつつ、隅角(ぐうかく)部に円曲線を取り入れるなど、洗練された設計となっているという。土木学会は「優美な曲線をもつ洗練された造形と阪神・淡路大震災にも耐えた堅牢さ」があると評価した。

「姫路市営モノレール遺構群」は、姫路市交通局が運営していたモノレール(姫路市営モノレール、姫路モノレール)の遺構。姫路駅と手柄山中央公園を結ぶ1.6kmの跨座式(こざしき)モノレールで、米ロッキード社が開発したモノレールを採用した。

しかし、計画当初から経営が成り立たないとする反対意見が寄せられていたにもかかわらず、姫路市が建設を進めて1966年に開業。その結果、大幅な赤字経営となり、開業からわずか8年後の1974年に休止し、そのまま1979年に廃止された。土木学会は「戦後姫路の躍進と大志の結集体」としているが、インフラ整備の失敗例の一つとしても有名だ。

姫路モノレールの軌道桁と大将軍駅(左)。現在は撤去されている。【撮影:草町義和】

現在はルート上に残っていた橋脚や軌道桁の撤去が進み、唯一の中間駅で高層住宅と一体化していた大将軍駅も撤去された。一方、手柄山中央公園内にあった手柄山駅はモノレールの保存・展示施設として再整備され、一般に公開されている。