秩父鉄道三ヶ尻線の一部廃止、最終列車は東武「リバティ」甲種輸送か 記念切符発売



秩父鉄道(埼玉県)は9月28日から、記念切符「三ヶ尻線さよなら甲種輸送記念乗車券」を発売する。貨物線の三ヶ尻線は、他社の新型車両などを貨物列車扱い(甲種輸送)で運ぶルートとしても活用されているが、同線の一部が廃止されるため、三ヶ尻線経由の甲種輸送は9月中で終了することになる。

記念切符のイメージ。【画像:秩父鉄道】

記念切符の発売額は1070円で、「武川から羽生まで」と「武川から寄居まで」の大人・片道乗車券をセットにしたもの。券面はポストカードサイズで、東武鉄道の500系特急型電車「リバティ」が電気機関車に引かれて走る甲種輸送の写真がデザインされている。

羽生・熊谷・武川・寄居・長瀞・秩父・御花畑の各駅窓口のほか、通信販売も行われる。販売期間は9月28日から12月31日までだが、売り切れ次第販売を終了する。

■石炭輸送は3月ダイヤ改正までに終了

三ヶ尻線は、秩父本線の武川駅から三ヶ尻駅を経由し、JR高崎線の熊谷貨物ターミナル駅を結ぶ7.6kmの貨物線。1960年代、三ヶ尻に太平洋セメント熊谷工場が計画されたのを機に、武川駅から三ヶ尻を経由して高崎線の籠原駅を結ぶ専用線が建設された。

秩父鉄道三ヶ尻線の位置。武川~熊谷貨物ターミナル間のうちJR高崎線寄りの三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間(赤)が廃止される。【作成:鉄道プレスネット編集部/『カシミール3D 地理院地図+スーパー地形セット』を使用】

のちに上越新幹線の工事に伴い熊谷駅での貨物の取り扱いを廃止することになり、その代わりに高崎線・熊谷~籠原間に貨物専用の熊谷貨物ターミナル駅を整備することが決まった。これを受けて専用線も、高崎線との接続地点を籠原駅から熊谷貨物ターミナル駅に変更し、さらに専用線から秩父鉄道の貨物営業路線に変更して運用することになった。貨物営業路線としては1979年10月1日に開業している。

三ヶ尻線の武川~三ヶ尻間では、秩父本線の沿線で産出された石灰石を太平洋セメント熊谷工場まで運ぶ貨物列車が運転されている。一方、三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間は、セメント生成燃料となる石炭を運ぶ貨物列車が走っていた。また、秩父鉄道は三ヶ尻線と秩父本線の線路がJR線・東武線とつながっていることを生かし、他社の新型車両の甲種輸送ルートとしても三ヶ尻線を活用してきた。

しかし、太平洋セメントが石炭輸送をトラックに切り替えたため、今年2020年3月のダイヤ改正までに三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間の石炭貨物列車が運行を終了。秩父鉄道は設備の老朽化で多額の更新費用が見込まれるとして、三ヶ尻線のうち三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間のみ廃止することを決め、三ヶ尻線経由の甲種輸送も終了することになった。

秩父鉄道は9月30日をもって、三ヶ尻~熊谷貨物ターミナル間を廃止するとしている。残る武川~三ヶ尻間は、引き続き石灰石輸送用の貨物線として使用される。

※修正・追記(2020年9月26日5時20分)

東武「リバティ」の増備車9両(3両編成3本)の甲種輸送が、兵庫→熊谷貨物ターミナル間で計画され、まず9月24日に3両の甲種輸送が出発。翌25日には6両の甲種輸送が出発して先行の3両と合流した。

熊谷貨物ターミナル駅には9月26日の23時50分頃、到着する予定。このため、27日以降に「リバティ」が三ヶ尻線経由の甲種輸送で東武線に搬入されるとみられ、この甲種輸送が同区間の実質的な最終列車になる模様だ。