JR武蔵野線の沿線で静態保存「夢空間」西武池袋線沿いの公園へ JR東日本の豪華客車



東京都清瀬市は、かつてJR東日本が運用していた豪華客車「夢空間」3両のうち2両を西武池袋線沿いにある同市の中央公園に設置して静態保存することを決めた。現在の保存場所からの搬入費用などをクラウドファンディング(CF)で調達する。

「夢空間」のダイニングカー。【画像:m3firm/写真AC】

中央公園に設置されるのは、JR武蔵野線の新三郷駅近くにある商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと新三郷」(埼玉県三郷市)で静態保存されている「夢空間」のダイニングカーとラウンジカー。清瀬市はオリジナルの姿に復元して2両を連結し、屋根を設けた状態で保存、活用する考えだ。

CFは3回に分けて実施することを想定しており、現在実施中の第1弾のCFでは1000万円を目標に調達。ららぽーと新三郷からの搬出作業と中央公園への搬入作業の費用に充当する。目標金額に達しない場合でも搬出入は本年度2024年度末までに実施する予定だ。申し込みはCFサイト「READYFOR」で10月31日23時まで受け付ける。返礼品は「夢空間」のヘッドマークのレプリカなど。

第2弾は内外装の修復作業、第3弾は空調・電気関係の修理や消失したパーツ・調度品の製作作業を行う。資金調達方法などは確定してないが、清瀬市はCFを選択肢に検討を進めているとしている。同市によると、「夢空間」は製造から35年が経過して外装が劣化しており、早期の修復が必要な状況という。

「夢空間」のラウンジカー。【画像:m3firm/写真AC】

「夢空間」が設置される中央公園では、児童館や図書館、地域市民センターで構成される複合施設が整備される計画。2026年2月に複合施設がオープンし、同年10月には中央公園がフルオープンする予定だ。清瀬市の渋谷桂司市長によると、複合施設の整備にあわせて「公園内に新たな賑わいを創出し、市内外から多くの方に訪れていただけるための良い仕掛け」として鉄道車両を設置するという意見が市民ワークショップで出された。これを受けて設置する車両を探したところ、ららぽーと新三郷から「夢空間」を譲り受けることになったという。

「夢空間」は発足直後のJR東日本が次世代の寝台車の試作的な位置づけで計画した豪華客車。後部展望室付きの食堂車「ダイニングカー」(オシ25 901)とバーラウンジやソファ、ピアノを設置した「ラウンジカー」(オハフ25 901)、2人用のA個室寝台車「デラックススリーパー」(オロネ25 901)の3両が製造された。デザインは1988年に「オリエント・エクスプレス’88」の運行で欧州から日本にやってきた、1920年代製造の「ノスタルジー・イスタンブール・オリエント急行(NIOE)」の客車を参考にした。

「夢空間」のデザインの参考になった「NIOE」の客車(来日時)。【撮影:草町義和】

1989年に開催された横浜博覧会「YES’89」で展示されたのち、団体列車や臨時列車で運用。2008年に引退し、のちにダイニングカーとラウンジカーの2両がららぽーと新三郷で静態保存された。一方、デラックススリーパーは東京都内のレストランで静態保存され、レストランの施設として活用されている。

清瀬市内にはJR線の駅はないが同市の北東部をJR武蔵野線の線路が通り抜けており、「夢空間」が同線を走行したことはある。

《関連記事》
寝台特急「あけぼの」実車に泊まれる宿泊施設、5年ぶり営業再開
日本にやってきたオリエント急行「NIOE」パリ五輪にあわせ復活へ